「追加利上げ」「もしトラ」「ハリス現象」…いま個人の投資家はどう動くべきなのか? 専門家の見解は
一本調子の「円安」は終了……年末までの動向は?
その円安は、日米金利差の拡大が背景にあるとされる。米国はインフレの抑制で利上げを繰り返してきたが、日本は超低金利政策を維持してきたため、お金は金利の高いほうに流れやすく、ドルを買って円を売る動きが加速した。今年の年初は1ドル=140円程度だったが、円安・ドル高が進行し、7月には一時、160円台をつけた。その後は150円前後での動きとなっている。 円安は輸入物価の上昇でインフレを加速するなど、日本経済への影響が大きい。今後の為替相場はどうなるのだろうか。 市川さんは「一本調子の円安は終了した」と話し、年末までに円高が進んでも147円程度とみていたが、もう少し円高方向に動く余地もあるとみている。その理由として、米国が9月に政策金利の利下げを開始し、日米金利差がわずかながら縮小するため。米国ではインフレが鈍化しつつあり、利上げから利下げに転じるとみられる。日本では大幅な賃上げが秋にかけて浸透していき、物価高を差し引いた実質賃金はマイナスが続いていたが、9月くらいにプラスに転じるとみている。 ◆個人の投資家はどういう姿勢がいいのだろうか…… こうした状況で、個人の投資家はどういう姿勢がいいのだろうか。香川さんは、インフレで現預金の資産価値が目減りするため、長期で値上がりが期待できる株式などに資産を配分するのも選択肢とみている。為替相場の動向は長期的に見通しづらいが、日本株と米国を中心とした海外株に分散投資を勧める。 分散投資の一つの参考例として、香川さんは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用を挙げる。GPIFでは、日本と海外でほぼ半々で、海外の中心は米国となっているという。さらに、「コア」の日米に対して、「サテライト」として、成長が著しいインドに注目している。いわゆる「コアサテライト」の投資理論だ。 株式投資の際に、初心者の投資家は個別企業の選定が大変だ。長期投資をして、その企業が倒産すると株券は紙切れになる。そこで、香川さんはインデックスファンドが選択肢になると言う。インデックスファンドは日経平均株価など、市場全体の動きを表す代表的な指数に連動した投資信託のこと。 香川さんは「インデックスファンドなら、個別企業と違い、つぶれることがありません。投資初心者の方は、政府が用意してくれている少額投資非課税制度の新NISAの投資限度枠をこれで埋めていくといいでしょう」と話す。 その際には、日本株のほか、海外分散投資先として、「オルカン」(オール・カントリー=全世界株式)という投資信託や、米国を代表する企業の株価指数S&P500へ投資する投資信託などもあるという。 広木さんは投資するタイミングとして「相場が上がっていく前に買うのがいい。いま、仕込んでおくといい」と話す。「株価は基本的に上がったり下がったりします。インデックスファンドなどに積み立てていくといい」とも言う。長期的に、こつこつと積み立てていく投資だ。 一方、広木さんは、日本の金利について、こんな指摘をする。日銀は金融緩和策として国債を大量に買い入れて、資金をじゃぶじゃぶに供給してきたが、日銀の植田総裁は7月31日の金融政策決定会合後に、’26年1~3月までに国債の買い入れ額を半減させる計画を発表した。そこで、「お金が出回らなくなり、お金の奪い合いになる」とみている。 銀行は金利を引き上げて、お金を取り合うという。広木さんは「米国のシリコンバレー銀行でもありましたが、日本の弱小金融機関でも突然の破たんが出てくるかもしれません」と話す。 大手銀行は大丈夫だろうが、弱小な金融機関は、日銀による金融正常化で、影響を受ける可能性がある。投資先の選定は、見極めも大切になる。 取材・文:浅井秀樹
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