【5番勝負】ホンダEクラッチ vs ヤマハY-AMTを比較試乗! 制御が巧みなのは? 乗っていて楽なのはどっち?【インプレ】
MTモードでは、アイドリング回転を割り込まない限りシフトアップが可能で、シフトダウンも回転が下がりきるまで待つことができる。ちなみに、アイドリング回転を割り込みそうなほど速度が下がればMTモードであっても自動的にシフトダウンされる。また、オーバーレブしそうな領域ではシフトダウンもキャンセルされる。 Y-AMTにおいては、マニュアルトランスミッションと同じように使いたい回転域を任意に設定でき、それでいてオーバーレブやエンジンストールなどが起こらないフェイルセーフが働くのがMTモードということになる。 付け加えると、最新世代のMT-09はヤマハの新作スイッチボックスを採用しており、軽いタッチでウインカーを3回だけ点滅させられるシーソー式ウインカースイッチや十字キー的な設定ボタン類、さらにシフト操作用のレバーが混在している。街中でよくある「ウインカー操作とギヤシフト操作を(無意識に)同時に行う」という場面では意識的にウインカー操作を優先する必要があり、左足のシフトペダルが欲しくなってしまった。
【結論その3】
ATモードがハマる場面とそうでもない場面があるY-AMTは、前述の停止寸前のシフトダウンでギクシャクしがちなところも含めると、快適性に優れてはいるものの注文をつけたい部分もある。よってEクラッチに対し一本勝ちではなく、優勢勝ちと判定しておきたい。
【その4】スポーティに走ったとき面白いのは?
ワイディングロードやクローズドコースを快走したい場合、もちろん使用するエンジン回転域は高めになる。かつ2車どちらもクラッチ操作はマシン任せで十分だ。 となれば、比較すべきはシフト操作の充実感と駆動力のダイレクト感、シフト操作による挙動の乱れの少なさといったところだろう。 まずEクラッチは、搭載しているCB650R/CBR650Rが電子制御スロットルなし、かつグローバル向けのミドルクラスであることから、マシン自体のスポーティさがやや控えめ。それを差し引いて考えるなら、スムーズで上質なギヤシフト感は十分に楽しめるし、気持ちのいい回転域を意図通りにキープしながら走るのはまさしくスポーツだ。Eクラッチはクイックシフターの上位互換と捉えることもでき、スムーズかつ素早いシフト感を存分に楽しめるはず。 ──ベースマシンがコンセプト的にやや穏やか路線ではあるが、Eクラッチの存在が確実にスポーツ性を高めていくれている。 ただ、Y-AMTはシャキシャキとしたシフトフィーリングやダイレクトな駆動感など、低速走行ではやや大仰に感じていたものが走りの気持ちよさに反転し、走りに没頭できる感覚では頭ひとつ上回っている。ベースマシンの素性がそもそも高いスポーツ性を狙っているということもあって、思い通りに走りを組み立てようとチャレンジする気持ちを誘い、とても面白い。シフトペダル操作から解放されたことで、ステップワークの自由度が高まっているのも好印象だ。 上記はMTモードで走ったときの感想だが、ATモードで走ったときにもスロットル開度に合わせてシフトアップする回転域は自動的に上がっていくし、シフトダウンはATモード中でも任意に介入可能なので、楽をしながら程よい気分でスポーティさを楽しむことができる。 ただ、完全にATモード任せにすると、コーナーの曲率によってはブレーキングから寝かし込もうという、ライディング中で最も繊細なシーンにシフトダウンが重なってしまうことがあるので、その手前で手動シフトダウンしておくのがおすすめ。やはりスポーティな走りを楽しむなら、ある程度の積極的な操作があってこそだ。 ──アッパーミドルクラスということで足まわりもよく、元々のコンセプトがスポーティなMT-09。これにY-AMTが加わることで鬼に金棒状態である。 ちなみに、ギヤが4速以上に入っているときはスロットル急開でキックダウンが行われ、自動的にギヤがひとつ下がって、より機敏な加速が可能になる。操作を試した範囲では1回のスロットル急開で1度のキックダウンが行われる模様。ギヤを2つ下げたいならスロットルをいったん閉じて急開し直すという馴染みのない操作を行うこともできなくはないが、普通に手元のレバーでシフトダウンするほうがシンプルだろう。なお、3速以下の場合はそのままのギヤで加速する。