AWS、「Aurora DSQL」や「Amazon Q」で進める“データの民主化”
Amazon Web Services(AWS)は、米国時間12月2~6日に開催した年次イベント「re:Invent 2024」で、ストレージをはじめチップやデータベース、生成AIに関する新サービスや機能強化を幅広く発表した。ここでは、AWSでデータベースサービス担当バイスプレジデントのG2 Krishnamoorthy氏に、新サービスが組織の効率化や“データの民主化”にどのように寄与するかを聞いた。 まず、Krishnamoorthy氏はデータの重要性について、以下のように説いた。 「大規模言語モデル(LLM)は汎用(はんよう)的な知識を多く持っているが、ユーザーがビジネスに活用するには、顧客の情報やビジネス方針、従業員の職務内容などの特定の情報が必要になる。強力なLLMと世界中の知識を組み合わせる能力があれば素晴らしいことが起こる。そして、データ基盤を持つことでさまざまなことができるようになる。例えば、セルフサービスビジネスインテリジェンス(BI)や機械学習(ML)のためにデータ基盤を持つ必要があるだろう。そして生成AIを適用することで、データからより多くの価値を引き出すことができる」 AWSは、データベースインスタンスの実行やパッチ適用などの運用負担を軽減し、MLアプリケーションの構築をより簡単にすることを目指して、さまざまなサービスの開発に長年取り組んできた。同氏は「私たちの目標は、開発者がアプリケーションの構築だけに集中できるようにデータベースの管理を楽にすることだ」と述べる。 2日目の基調講演で発表されたサーバーレス型の分散SQLデータベース「Amazon Aurora DSQL」は、データベースのストレージ管理をより容易にしたものだという。サーバーレスのためインフラ管理が不要で、SQLの全機能が得られる。また、ミッションクリティカルなアプリケーションであればマルチリージョンでも対応でき、ダウンタイムの原因となるデータベースのメンテナンスも不要となる。 また、蓄積したデータの利用についても、AWSのサービスを活用することでより“データの民主化”に近づくことができるとしている。同社は、AIアシスタントサービス「Amazon Q」をさまざまな用途に向けて展開している。インフォメーションワーカーや意思決定者は「Amazon Q Business」やBIサービス「Amazon Q in QuickSight」を利用して組織の情報を迅速に取得できるとしている。同氏は、「情報を取得するには正しいデータ基盤が必要。私たちはそのようなデータ基盤の構築を支援するために『Amazon Sagemaker Unified Studio』や『Amazon SageMaker Lakehouse』を提供した」と説明する。 Amazon Sagemaker Unified Studioは、フルマネージドMLサービス「Amazon SageMaker」の次世代のサービスとして発表された。データ準備からビジネスインテリジェンス、ML、生成AIを搭載したアプリ開発など、さまざまな機能を統合している。データ基盤を構築している組織は、Amazon Sagemaker Unified Studioを通じて全ての機能にアクセスできる。そして、Amazon Q BusinessやBIツール「Amazon QuickSight」を通して組織のデータを活用することで、ビジネスの改善や顧客体験(CX)の向上につなげることができるとしている。 この取り組みは、IT部門がない小規模な組織でも可能だという。Amazon Q Businessはインデックスを作成することで、ServiceNowやSalesforceなどのさまざまなSaaSアプリケーションと容易に接続でき、SaaSに蓄積する組織の全データを活用できる。さらにAmazon Qは自然言語による質問で簡単にやりとりができる。まさに“データの民主化”に近づくことができるサービスとなるだろう。 Krishnamoorthy氏は、「組織は、インフラの維持管理に時間をかけず、ビジネスやアプリの作成により多くの時間を費やしたいと考えている。私たちは、インテグレーションに関する課題を取り除くことを大きなテーマとして掲げている。次世代のSageMakerやZero-ETL統合がその例になる。そしてAmazon Aurora DSQLを用いることで、サーバーレスでデータベースが利用できる。これにより、組織はアプリや顧客体験に集中できるようになる」と説明した。 (取材協力:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)