「災害援護資金」に返済義務はある? 滞った場合、ペナルティは発生するの?
災害で被害を受けた人を支援するための制度の一つとして、災害援護資金があります。災害時には経済的に困窮するケースが多いため、便利な制度といえるでしょう。 しかし、災害援護資金に返済義務があるのがどうか気になる方もいます。そこで本記事では、災害援護資金の概要や返済義務の有無などについて詳しく解説します。
災害援護資金とは
災害援護資金とは、被災者の生活を立て直すための特別な貸付制度です。大きな災害によって財産や家屋を失った場合には、途方にくれてしまうでしょう。 しかし、災害援護資金を利用すれば、貸付限度額の範囲内で当面の生活を立て直せるかもしれません。 ■災害援護資金の対象 災害援護資金は、都道府県内で災害救助法が適用された市町村が1つ以上ある災害が対象です。具体的な対象は、災害により負傷または住居、家財に被害を受けた者です。 負傷とは、世帯主が1ヶ月以上の負傷を受けた場合を指します。住居や家財の被害は、住居では半壊以上、家財では1/3以上の被害が対象となる条件です。 ■災害援護資金の貸付金額 災害援護資金の貸付金額には、上限があります。条件によって金額は変動しますが、最大で350万円の貸付が可能です。 金額を決める条件の詳細は、表1の通りです。 表1
厚生労働省「災害援護資金の概要」を元に筆者が作成 災害援護支援金を利用する際は、自分がどの条件に当てはまるかをチェックしましょう。 ■災害援護資金には所得制限がある 災害援護資金には、所得制限があります。世帯人数によって金額が異なるため、人数ごとの上限金額を確認しましょう(表2)。 表2
厚生労働省「災害援護資金の概要」を元に筆者が作成 なお、世帯住居が滅失した場合は総所得金額1270万円までが対象です。
災害援護資金は返済する必要がある
災害援護資金は、あくまで貸付制度です。つまり、借りた分の金額は返済する必要があります。 しかし、被災者の生活を立て直すための支援なので、利率や期間については一般的な金融機関よりも返済しやすい設定になっています。返済に関する具体的な条件は、以下の通りです。 利率:年3%(据置期間中は無利子) 措置期間:3年(特別の場合5年) 償還期間:10年(据置期間を含む) 償還方法:年賦または半年賦 延滞利率:年10.75% 国の支援制度ですが、返済を滞納すると延滞利率が発生する点には注意しましょう。 ■滞納により督促の申し立てを受ける可能性がある 災害援護資金を滞納していると、督促の申し立てを受ける可能性があります。実際に災害援護資金を返済せず滞納を続けており、数年前から連絡がとれなくなった事例があります。このケースでは、自治体が返済の意志が見られないと判断し、滞納者に対して裁判所を通じて支払いの督促が申し立てられています。 しかし、経済的に返済が困難な場合は、期限の延長も可能です。そのため、返済を滞納し連絡を絶つのではなく、まずは自治体に相談しましょう。 ■返済を免除できる可能性がある 災害援護資金には、返済を免除できる条件が定められています。具体的には、以下の2つの条件を満たせば申請が可能です。 1.災害援護資金を借り受けた人が死亡し、相続人がいない時や相続人が償還できない時または、借り受けた人が、精神や身体に大きな障害を受け返済が難しい時 2.連帯保証人や連帯保証人の相続人が、未償還額を返済できない時