<米大統領選>“ブッシュ家の最高傑作”ジェブ氏は共和党で勝ち残れるのか?
前大統領の「兄」とは対照的な性格
兄のジョージ・W・ブッシュ前大統領と弟のジェブは、対照的な性格であるとよく指摘されています。特に、人懐っこく気さくな兄に比べて、ジェブの場合は、どちらかといえばじっくり一人でものを考える思索型です。兄は、若いころはアルコールにおぼれ、その後、改心して敬虔なクリスチャンとなりましたが、弟は子供のころから、生真面目で実直で、論理的な思考も得意であったといわれています。 対照的な二人であるため、ジェブの方は“ブッシュ家の最高傑作”という声も昔からあります。実際、政治家としての潜在的な才能は、ジェブの方が高いというのが定評です。前述の1994年のフロリダ州知事選挙の際、兄も同時にテキサス州知事選に出馬しましたが、「ジェブが勝利、ジョージは敗北」というのが事前の予想でした。周りの期待も弟の方が高かったのですが、選挙結果は逆となりました。これをきっかけに、知事としての経験は兄が先行し、6年後の2000年には兄が大統領選挙で勝利します。 ジェブとしては、その後、とんとん拍子だった兄にだいぶ遅れを取ってしまったという感覚があるのは間違いないでしょう。年齢的にジェブは現在61歳なので、2016年の大統領選挙出馬にはこれがぎりぎりの年齢という判断もあるのかもしれません。共和党のライバルとなりうる人物の中で、2012年の大統領候補のロムニーの67歳は例外としても、クリスティ52歳 ルビオ43歳など、既に次の世代が迫っています(民主党の最有力候補として名前が挙がるヒラリー・クリントンが67歳ですが、高齢を懸念する声もあります)。
「穏健派」が予備選であだに?
ジェブ・ブッシュがもし、共和党候補になった場合、穏健派であることから、民主党支持者の一部を切り崩すことができるとみられています。前述のように共和党が後塵を拝しているヒスパニック系からの人気も高いほか、毎年、共和党と民主党候補が激戦となる出身州のフロリダ州の選挙人獲得もほぼ問題ないとみられます。戦後同じ政党が大統領を3期続けたのは、過去1度しかありません(レーガンとジェブの父のブッシュ両大統領の12年間)。現在、民主党と共和党が拮抗していますので、民主党政権が8年続いた後となる2016年選挙は、ジェブにとっては大きなチャンスかもしれません。 問題は、共和党候補を選ぶ予備選段階を勝ち抜くことができるかどうかという点です。共和党にしろ、民主党にしろ、予備選段階の投票率は極めて低いため、参加するのはどうしても共和党なら極端な保守派、民主党なら極端なリベラル派の人たちが中心となります。穏健派のジェブにとっては不利です。 特に、予備選段階の最初は、アイオワ州党員集会やサウスカロライナ州予備選挙など、保守の中の保守のような州が集中しており、ティーパーティに支持されているテッド・クルーズやランド・ポールなどと共和党内保守派のほか、マイク・ハッカビーら宗教保守を体現する候補者らがどうしても有利となります。予備選段階の最初の数州は、資金集めでもメディアの注目度でも非常に重要な戦いとなるため、ジェブにとってはどうしても戦略的に回避できない州ばかりです。ジェブよりも穏健派のルディ・ジュリアーニは2008年大統領選挙の予備選で最初の数州での選挙運動を取りやめ、途中参加という形になりましたが、その後、全く振るわなかったのはジェブにとっては痛すぎるほどの前例です。