〈HIKAKIN進化論〉カップラーメン好きの「ビートボクサー」がYouTubeの帝王になるまで…進化とともに「長尺化」する動画の秘密
商品レビューと挑戦動画への進化(2011年~2014年ごろ)
2011年はHIKAKINが「YouTuber」の存在を明確に意識し、そのキャリアを真の意味で歩み出した年だ。 そのきっかけは同年のYouTubeイベントで聞いた、アメリカのYouTuberミシェル・ファンの講演だった。 まだ「YouTuber」という言葉も確立されていなかった頃、アメリカにはYouTubeへの動画投稿で生活しているセレブがいることを知り、YouTubeが仕事になることに衝撃を受けたという。 そこからHIKAKINはVlogチャンネルという立て付けで新チャンネル「HikakinTV」を開設。商品レビューや食品の試食、チャレンジ企画などの新しいジャンルにも挑戦し始めていく。 最近本人がセルフオマージュ動画を投稿して話題になった「セブンの豚焼肉弁当が最強すぎる!」もその一つ。 他には「iPhone5を命がけでゲット!I Bought an iPhone5!」という、iPhoneを購入するために行列に並ぶ動画も時代を感じさせる貴重な資料であり、世間が共感しやすいネタや注目されている話題に飛び込んで「ネタ化」していくのは、現在まで続くスタイルと言える。 いずれの動画も3~6分程度で、やはりビートボックスよりも長くなっていることがわかるだろう。 また、この頃のYouTube社スタッフのアドバイスのもと、定期的な動画アップロードやチャンネル登録の呼びかけを採用し、現在まで続くYouTuberの基本スタイルを確立させていったことも見逃せないポイントだ。 ちなみに筆者は2015年にすでにトップYouTuberとなっていたHIKAKIN氏にインタビューしたが、今思い返せばミシェル・ファンと出会った2011年からわずか4年でそこまで上り詰めていたのだから、驚くべき勢いだ。
エンタメ要素の強化と多様なジャンルへの拡大(2014年~2017年ごろ)
2014年以降、HIKAKINの動画にはさらにバラエティ要素が強まり、DIY、ガジェット紹介、旅行、食べ物など多様なジャンルに挑戦していく。 なかでもHIKAKINが幼少期に影響を受けた「コロコロコミック」的なホビー文化の反映、そしてテレビ番組的な企画構成と演出が強まっていく点に注目だ。 YouTuberへの注目度が高まるにつれ、HIKAKINのテレビ出演も増えていくことになるが、この時点でその片鱗は十分に見えていた。というか、そもそも彼のスタート地点には「ハモネプ」があることを忘れてはならないだろう。 「風呂で氷漬けになってみた!ロッテ爽キャンペーン!」は、そんなHIKAKINのスタイルと、当時流行した「メントスコーラ」的な体当たり感がミックスされたヒット動画だ。 そして動画の尺だが、ロッテとのタイアップである本動画は8分超え。 同時期の「ガリガリ君リッチナポリタン味でナポリタンスパゲティ作ってみた!」は13分超の動画となっている。 これは視聴者が「一緒に楽しむ」ようなエンタメ動画が増加したことも影響しているだろう。あのカラフルなソファーが象徴するように「HIKAKINと共に過ごす時間」そのものがエンタメであるというフォーマットへと進化していったのだ。