【承香院さんの五感で楽しむ平安ガイドVol.1 】当時の音色に焦がれて、琵琶を自作!?
当時の琵琶の音色が聞きたくて、同じ素材と寸法で再現した。
そうして、とにかく実際に試してみたいという気持ちから、琵琶を手作りしたことまであるというから驚きだ。 「古典を読んでみると、琵琶の音色について『仏様が降りてくるようだった』とか『あまりにもすばらしすぎて地震が起こった』というようなすごい表現で書かれている。『紫色の雲が湧いてきた』『香りが漂ってきた』とも。それはどういう音を表現しているんだろうと思うわけです。その音を聴くには同じものを弾いてみないと、と」 その思いに駆られ、正倉院に収められているものと同じ素材を使って琵琶を作り上げた。 「今回の撮影に持参したこちらの琵琶は職人さんに頼んだものですが、1作目は私、自分で作りました。東京は新木場にある木材問屋さんを回って正倉院と同じ素材がないか1軒1軒訪ねて手に入れ、血みどろの手になりながら1年間かけて完成させたんです」 当時の天皇が耳にした音を聞いてみたい、その一心でノミを振るったのだという。琵琶を作り上げてみたら満足したものの、職人さんが作ったらどうなるのだろうと、新たに制作をお願いした。 「実際に作ってもらったら、嬉しかったのは自分で制作したものとも音色は非常に似ていました。ただやはり、鳴り=音量や出音の質が違うんです。当時はアンプなどはないから、よい楽器の条件は遠くまで音が聞こえること。大きさや材質は同じなので音色は同じでも、鳴りが違いました。今は、笙や笛も習っているんです。琴も耳コピしながら弾いています」 と、琵琶のみならず、今は笙の笛や琴の音色にも親しんでいるという。楽器ひとつとっても、驚きのこだわりぶりなのだ。そうした承香院さんの実践する平安の暮らしぶりを通して知る、今の私たちと変わらない感覚と新鮮な驚き、そして楽しい発見をこの後もお届けいたします!
承香院 さん じょうこういん 平安文化実践研究家(主に装束) 平安時代の装束や文化を実践しながら独自に研究を重ね、SNSで発信。その集大成である『あたらしい平安文化の教科書』が刊行された。
撮影・青木和義 構成&文・中條裕子
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