<IFA>100周年を迎えた「IFA」の変化とこれから。主催者が語る“イベント体験”の重要性
ドイツ・ベルリンで毎年行われる、家電とエレクトロニクスの展示会「IFA」。今年は9月5日から9日までの5日間に渡って開催された。 今年度は1924年の第1回開催から100周年を数えるメモリアルイヤーとなっており、その運営指揮を執るのは、IFA Management社のCEO Leif Lindner(ライフ・リントナー)氏だ。氏が登壇したオープニングカンファレンスの通り、100周年の節目を機にイベントのリブランディングを行うなどの新たな試みを行った「IFA2024」。イベント会期中、その手応えを伺ってみた。 ―― “イベントの若返り” を打ち出した今回のIFAについて、現状どのような反応が寄せられていますか? Leif 業界や取引先から得ているフィードバックは、ポジティブな意見が圧倒的です。我々が打ち出した “変化” について好意的に受け止めてもらっています。マスコミに向けたオープニングカンファレンスや、オラフ・ショルツ首相を招いたオープニングガラでのスピーチも成功といえる内容でしたが、イベントに対するインプレッションで一番大事にしたいのは「体験してもらうこと」です。 開催から数日という段階ではありますが、「IFAが若くなった」ということを、様々な国のジャーナリストも実感してくれていて大変嬉しく思っています。今年の開催では、コロナ禍前に行っていたコンサートを復活させ、シンガーソングライターのブライアン・アダムスや、ドイツのヒップホップアーティストによるパフォーマンスを披露しました。 アダムスは、参加するまで「スーツにネクタイ姿で落ち着いている人たち」の前で歌うことを想像していたそうですが、本番はかなりの盛り上がりだったようで「また必ず戻ってくる」とまでいってくれました。これは本当に嬉しいことです。ヒップホップアーティストによるEDMライブも大盛況で、サマーガーデン(Sommergarten/メッセ・ベルリン中庭)が一度にあんなに混むことは、なかなか無いと思います。 また、午前中(取材日は9/7)には、歌手 兼 女優・慈善家のニコール・シャージンガーによるキーノートスピーチを実施しました。参加者の80%が25歳から30代の女性というのは、これまでのIFAではなかなか考えられないような光景でした。今年の経験も踏まえ、エンターテインメント、情報、ショーケース、イノベーションそして、世界中のあらゆる業界のキーパーソンを集めるというビジョンこそ「今後2,3年のIFAのあるべき姿」だと考えています。 ――パンデミックによる中断を経て、実地でのイベント再開から3年目になります。今年は何社、何グループが出展したのでしょうか? Leif 約1,800になります。数値を見ると昨年比で少なくなっていますが、B2B関係の出展社を集めた「IFA Global Markets」を、メッセ・ベルリン内から別会場化へと移しました。結果的にメッセ・ベルリン会場の出展社スペースの増加につなげています。 IFA Global Marketsでは中国系のサプライヤーが主だっていますが、個人的にはアジア系の企業ではやはり、日本や韓国からもっと多くの企業を本会場に誘致したいです。日本の企業は完璧であることを求めすぎて、自分たちを過小評価しているように思えます。今回、ホール7で実施した「IFA NEXT」では、東京都からスタートアップ「SusHi Tech Tokyo(スシテック トウキョウ)」が出展されています。ベルリン市長を伴ってブース訪問する際は、もっと日本企業がIFAに来るように働きかけるようなメッセージを送りたいですね。 ――今後のIFAの展望についてはどのようにお考えですか? Leif 現在のプロセスについては70パーセント満足といったところで、大事なのは消費者や出展者が私たちのやり方をどう見ているかということです。次いで、我々がリーチしている重要な分野での成長になります。今回でも多くの展示を行ったスマートホーム、テック、デジタルヘルスもそうですが、モビリティに関して明確な足跡を残していきたいです。IFAとして良い結果を残すことができれば、来場された方々もその分野を期待するはずですから。 これまで100年続いてきたIFAの技術的な分野を保ちながら、先ほどお話ししたようなプロフェッショナルなエンターテインメントで街全体の活気を高めていければと思いますね。 また、パンデミックなどもあり、ここ2、3年のIFAはあまり元気があるとはいえませんでしたが、イベントとして「強くなれば」ドイツにおける貿易や経済にポジティブな影響を与えることもできます。 そして今年はSNSインフルエンサーも積極的に招いたので、対外的なアピールもこれまでと違った側面で行っています。やり方として即効性のあるものでは無いかもしれませんが、時間が必要だと思いますし、私としてはこのコンセプトが良いものだと確信しています。 イベントとしてのさらなる盛り上がりと、来場者とのさらなる双方向性が来年度の課題です。私たちが「イベント体験」という側面に真剣に取り組んでいることが皆に伝わったので、これらを達成するチャンスは十分にあると思います。 ――ありがとうございました。
PHILE WEB編集部