「難病の客からは1人90万円を」過剰な訪問看護、背後にいた人物とは 福祉ビジネス、違法な助言をするコンサルも
ホスピス型の有料老人ホームや精神障害者を対象にした訪問看護を巡り、運営事業者による不正、過剰とみられる診療報酬の請求が相次いで明らかになっている。一部では、介護・福祉を専門にした経営コンサルタントが関わっていた。取材で内部資料を入手すると、そこには「いかに稼ぐか」という視点からの生々しい手法が並ぶ。コンサルによっては、法令違反となる診療報酬の請求まで助言。私たちの税金や保険料が無駄に使われていることが分かる。こうしたコンサルは近年増えているとみられるが、実態が明らかになるのはまれだ。直撃取材にコンサルたちが語ったことは―。(共同通信=市川亨) 【写真】「依存症施設反対」ビラは町中にあふれるように…700人近くの住民が集まり、怒号が ワイドショーも報じた「依存症施設反対」のその後
▽「別表7、8」がカギ 今回、コンサルから過剰な診療報酬請求のアドバイスを受けていたことが分かったのは、大阪市の「アプリシェイトグループ」。千葉、京都、大阪3府県で有料老人ホームや訪問看護などを運営している。 老人ホームの一つ「アプリシェイト東淀川」(大阪市)では、難病や末期がんの入居者を対象に、必要以上に訪問看護を提供していたことが社内のLINE(ライン)や看護師らの証言で分かっている。 同社と契約を結びコンサルとして助言していたのは、高知市にある有限会社「ナースケア」の和田博隆社長。和田氏は看護師資格を持ち、自身でも高知市で有料老人ホームや訪問看護ステーションなどを経営している。 和田氏の助言内容を記したアプリシェイトの社内文書には、次のような一文があった。 「別表7の顧客からは1人当たり90万をあげないといけない」 これはどういうことか。「別表7」というのは、医療保険を使った訪問看護で厚生労働省が定めた20の疾患の一覧表を指す。末期がんやパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの難病が挙げられている。
もう一つ、気管切開や重度の褥瘡など特別な管理を要する「別表8」というのもある。 訪問看護の頻度は原則週3回と定められているが、別表7、8に該当する患者の場合は、毎日3回まで診療報酬を請求できる。看護師らの判断で毎回、複数人で訪問することも可能で、そのたびに加算報酬が得られる。末期がんや難病の人の場合、きめ細かいケアが必要になることがあるからだ。 社内文書の一文は「難病などの入居者からは1人当たり月に90万円の診療報酬を得ないといけない」という意味になる。ただ別表7、8の患者全員が常に1日3回、複数人での訪問が必要なわけではない。あくまで患者の状態に応じて判断すべきだが、制度を逆手にとって診療報酬をなるべく多く取ろうという意図が感じられる。 ▽「売上増加を早速やってもらいます」 アプリシェイトの社内文書には、ほかにも和田氏の助言がいくつも記されていた。 「夜間早朝・深夜加算 フルでとりきる」