「100万円振り込めば身の潔白を証明できます」…64歳男性が騙されかけた「警察官なりすまし」その巧妙すぎる手口
オレオレ詐欺や強盗事件など、闇バイトとみられる事件が後を絶たない。関東地方に住む男性は今年8月、警察官を名乗る男女に金銭を奪われそうになった。その時の様子を前編記事『「あなたは詐欺事件の加害者です」…いきなり“警視庁”から64歳男性にかかってきた「驚きの電話」と、“鹿児島県警”から送られてきた逮捕状の「ヤバすぎる中身」』に続き、詳報する。 【画像】なんじゃこりゃ…「鹿児島県警」からLINEで届いたという逮捕状
あなたの口座だと証明するために…
関東地方に住む小林紘一さん(仮名・64歳)。今年8月、「警察官」を名乗る男から電話がかかってきた。 「あなたは加害者になっている可能性がある」として詐欺事件の容疑をかけてきたのだ。危うくお金を支払いそうになってしまった一連の経緯は、前編記事で報じた通りだ。 警視庁捜査二課の吉田(仮名)と名乗る男性と、鹿児島県警の警部で田中(仮名)と名乗る女性。特に田中は小林さんを事件加害者だと決めて話を進めていた。 2時間近くLINEの通話機能でやり取りを続けていると、田中は「…もしかすると、あなたは詐欺事件の加害者ではなく、被害者である可能性も出てきました」と告げてきた。 「それなら判事の許可が出れば、あなたの口座を調べて潔白を証明できます。まず、銀行の口座がいくつあるのか、その残額がいくらあるか教えてほしい」(田中) 「ようやく信じてくれたか」と、安心した小林さんは近くのコンビニエンスストアのATMに行き、口座の中にある金額をすべて田中に伝えた。 すると、田中は次のように言ってきた。 「では、あなたの口座があなたのものであることを証明するために、出入金があるかを調べます。これから指定する口座に100万円を振り込んでほしい。お金は判事が口座を調べたのち、お返しいたします」(田中)
詐欺です! 電話を切ってください!
そこである疑問が小林さんの中で芽生えてきた。 「私もお金があるわけではない。そんな貧乏人に対して、なぜ100万も払わせようとするのだろうか。出入金を調べるだけなら1万円…1円でもいいのではないか」(小林さん) 一度芽生えたモヤモヤは、そう簡単には消えなかった。「もしかしたらこれは詐欺ではないか」との思いが頭をよぎった。そのため、指示された銀行のATMに向かう途中、交番に駆け込んだのだ。 「かばんを交番の外に置き、その中にスマホを入れて私の会話が聞かれないようにしました。『詐欺かもしれない』とは思っていましたが、どこかで極秘捜査中の捜査官なのかもしれない、という思いもまだ残っていました」(小林さん) 緊張しながら交番にいた警察官に小声で事情を説明した。 「詐欺です。電話はすぐに切ってください」(警察官) そこでようやく、自分が騙されていたことに気が付いたというわけだ。 「自分は事件の加害者ではない、という安堵と、お金を払う前でよかったという気持ちが同時にありました。自分はお金がないしケチなので、100万円は大金。いくら確認のためとはいえ、支払うことには抵抗がありました」(小林さん) しかし、小林さんは「もし100万円と言われなかったら、支払っていてもおかしくはなかった」と振り返る。