気象データは「宝の山」か(下) 民間活用拡大へ気象庁も積極姿勢
師走を目前に控えた2018年11月30日。東京・新宿のイベントホールで「第1回気象ビジネスマッチングフェア」と題する催しが開かれた。主催したのは気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)というあまり聞きなれない組織。会場には首都圏だけでなく岩手、福島、大阪、愛知、香川、広島、福岡など全国各地から245人がやってきた。そして、気象データを提供する会社、気象データをビジネスに利用したい企業、データ分析が得意な企業などの「お見合い」が行われた。
会員急増の気象ビジネス推進コンソーシアム
WXBCというのは、新しい気象ビジネスの創出を目的とする産官学の連携組織。事務局は気象庁だ。気象事業者、情報通信、農業、小売、金融などに関する産業界や先端技術に詳しい専門家など約200者が会員となり、2017年3月に設立された。ほぼ2年がたち、会員数は566者にまで増加(2月6日現在)。そのうち250者が今年度に入ってから新たに加わったという。 WXBCの設立の1年後には、気象庁は総務部情報利用推進課内に「気象ビジネス支援企画室」も新設された。担当者は「『ビジネス支援』なんて部署は他の省庁にはないんじゃないか、と言われたこともあります」と苦笑する一方、「専門組織が立ち上がったことで、取り組みが加速したと思います。その結果がWXBCの会員増にもつながりました」と話す。
「生産性革命」の一環
ところで、なぜ、今、気象庁がこうした取り組みを進めるのだろうか? その答えは、どうやら安倍政権が進める「生産性革命」にあるようだ。気象庁は国土交通省の外局にあたるが、その国土交通省は「国土交通省生産性革命本部」を設置。先進的な取り組みとして20の「生産性革命プロジェクト」を選んだが(その後、複数のプロジェクトが新たに追加)、その時に、気象庁が「気象ビジネス市場の創出に取り組む」と手を上げた。 マッチングフェアもこの取り組みの一環で、評判は上々だったという。来場者アンケートでは「普段接しない企業と会えた」「想定していないニーズがあった」「出会ったいくつかの企業とは個別に商談を行う予定」――など好意的な意見が寄せられ、参加者の8割が「第2回があれば参加したいか」という問いに対し、前向きな返答をしたという。 一方で課題も見えてきた。同じく来場者アンケートでは「データ量が多く、処理が困難」「有用な形態での安易なデータ取得ができない」「データの扱いづらさがやはりきつい」といったデータそのものの取り扱いにくさを問題視する声が多く聞かれた。担当者は「精度向上を求める声もありますが、やはりデータを扱いやすい形にしてほしいというニーズやコスト面を心配する声が多いようです」と分析する。