視覚障害者に「勝手に触らないで」 当事者が切実な訴え 意図せぬ事故の危険も…「命に関わる」
「助けたい」「手伝いたい」という思いと、当事者の本音とのズレやすれ違いを発信
「SNSを始めて、白杖ユーザーを見かけた方の『どう声かけたらいいかわからなかった』『声をかけたけど、余計なお世話だったのではないか』という投稿の多さに気がつきました。実際にも『誘導方法がわからなくて、ごめんなさい』『余計なお世話かと思ったけど、声かけてしまってごめんなさい』と、お声がけだけでもうれしいのに、ご自身の至らないと思われた点を謝ってくださる方がいます。 また、私が意図的に壁に向かって歩いている時に、『こっちですよ』と急に腕を引っ張られたり、電車やエスカレーターの乗り降りの際に体を支えられたり、私の体が自分の意図しない方向へ動いてしまうことがあります。ほとんどが『助けたい』『手伝いたい』と思っての行為であることは理解していますが、実際にはとても危険な行為で、私がバランスを崩したり、電車とホームの隙間やエスカレーターの降り口を確認できず、転んだりしてしまう可能性もあります。 せっかく『助けたい』『手伝いたい』と思って行ってくださったことなのに、かえって白杖ユーザーを危険にさらしてしまう、このズレやすれ違いが存在してしまっていることを、とても悲しく思っていました。『助けたい』という優しい気持ちを、私自身がそのまま受け取れるように、『こういうのは助かる』『こういうのは実は助からない』と伝えていきたいと思いました。また、私の目が見えなくなったからこそ、見えるようになったこの世界の優しさを、SNSを通して伝えていくことで広げていけたらいいな、とも思っています」 あらためて、今回の投稿については「白杖を持っていない腕でも鞄でも背中でも、突然、私の意思とは関係なく体が動くこと、私の意思で体を動かせなくなることは、とても危険で怖いです。みなさんは『助けたい』『手伝いたい』と思ってしてくださっていると思うので、本当は危ないことである、ということを知ってもらいたくて、投稿しました。さらに、もっと根本的なお話で、私は目が見えないけれど皆さんと同じ人で、他の皆さんがそうであるように、危険な時を除いて『許可する前に他者から体を触られない』ということは、1人の人として大切なことであると思い、投稿に含めました」とその真意を説明する。 共感や学びなど、さまざまな反応があったという今回の投稿。一連の反響について、暗闇の姫さんは「たくさんの方にご覧いただき、『気をつけようと思った』などのコメントを多くいただき、とてもうれしく思っています。しかし、中には障がい者差別と受け取れるコメントや、肯定意見か否定意見かにかかわらず、私の意図と異なる受け止め方をされていたコメントもありました。私自身、もっと上手に伝えられる方法を考えるきっかけになりましたが、やはり差別や偏見を含んだコメントや、私が書いていない内容をあたかも私が書いているかのようなコメントを読むと、とても悲しい気持ちになります。 私は、特定の誰かの特定の行為を責めたいのではなく、『次』に誰かを助けたいと思ってくれた時に、『そういえば急に触ったら危ないって言ってたな』と思い出してもらい、危険が差し迫っている時以外は、まず声をかけていただければと思っています。1人の視覚障害当事者として、こういった事実をお伝えすることで、『助けたい』と思ってくださったその優しい気持ちを、私自身も気持ちよく受け取れるように、これからも『私の見えない日常』を届けていきたいと思います」と話している。
ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム