「S&P500」「オルカン」だけで十分、という人が見落としている「盲点」
近年、投資信託の世界では、全世界株式に投資できる「オールカントリー(オルカン)」や米国株式中心の「S&P500」が注目を集めています。特に「オルカン」は、新しいNISA制度を追い風に、「これ一本で十分」と評されるほどの高い人気を誇っています。しかし、全ての投資家を対象にこれらインデックス投資に資産運用を任せてよいのでしょうか。 【マンガ】「長者番付1位」になった「会社員」の「スゴすぎる投資術」の全容 そこで今回はインデックス投資のメリットと課題、そして補完的な投資戦略について詳しく解説していきます。
1.「オルカン」の盲点を知る
「オルカン」とは、先進国から新興国まで幅広く分散投資する商品で、その分散性の高さから、「世界全体の成長を享受できる」との期待が寄せられています。しかし、この「万能感」には注意が必要です。 なぜならオルカンの代表格である「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の組み入れ上位国を見ていくと、米国が全体の64.1%、続いて日本4.7%、イギリス3.1%、カナダ2.7%、フランス2.4%と続いていきます。いいかえれば、新興国の成長を取り込みたいと考えた場合、ファンド全体での比重はオルカンのイメージよりも少ないと考える方が多いのではないでしょうか。具体的に言えば、経済成長が著しいインドの比率は「オールカントリー」全体の約1.9%に過ぎません。仮にインド株が急成長しても、ファンド全体への影響はごくわずかなことを意味します。 さらに、新興国市場は一般的に成長率が高い一方で、リスクも伴います。「オールカントリー」はこれらの市場を適度に取り込む設計にはなっていますが、成長のポテンシャルをフルに活かすには、より直接的な投資が必要になるのです。
2.「S&P500」の盲点を知る
「S&P500」は米国を代表する主要企業500社に分散投資できる手軽さと、高いリターン実績で多くの支持を集めています。しかし、この指数にも注意が必要です。 S&P500は情報技術セクターの比率が約25%を占めており、その動向に大きく左右されます。特に、ハイテク企業の株価が一時的に急落した場合、指数全体が大きな打撃を受ける可能性があります。特にマグニフィセントセブン(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾンドットコム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ)の割合は全体の3割を超えていることも認識しておくことが重要です。 つまり米国市場は強力ですが、世界経済全体の成長を取り込むことはできません。もちろん現在のように米国1強が続けば大きな利益を得られますが、他国の成長性を無視する形になるため、リスク分散としては不十分な側面もあります。 またS&P500はドル建ての投資商品であり、円高の局面では円換算リターンが減少します。特に長期運用を考える場合、この為替リスクを念頭に置く必要があるでしょう。