試合に「早く負けてほしい」? ネットが明らかにした「ブラック部活動」
先生の嘆きは「タブー」
教員における部活動負担の問題は、これまで部活動関連の議論から漏れ落ちてきた。部活動の問題点はこれまで、生徒の側の被害や損害、たとえば顧問からの暴力(いわゆる「体罰」)、過酷な練習とそれによる事故(熱中症や負傷・障害など)、生徒間のいじめなどの話題が中心であった。 このときの構図では常に、生徒は被害者で、教員や学校は加害者に位置づけられていた。被害者である生徒の立場から部活動を問題視することはできても、加害者とされる教員の側から不満を訴えることは教育界のタブーであった。 しかも学校では、「部活動を指導してこそ一人前」という教員文化が支配的だ。部活動を重荷に感じる教員の苦しみや嘆きは、なかなか表に出にくい。嘆こうものなら、「教師失格」と言われかねない。部活動指導を嘆くことは、長らく職員室のタブーであった。
ネット空間で先生たちが立ち上がった
では、なぜ部活動の実態が明らかになってきたのか。教育界や職員室のタブーを打ち壊して、教員側の声を拾いあげたのは、インターネット空間であった。 教育界や職員室では「部活がつらい」と言えなくても、匿名のTwitterであれば、声を発することができる。部活動の改善を目指す団体「部活問題対策プロジェクト」(2015年12月設立、教員6名で構成)の一員である「ゆうけん」先生は、「部活問題が社会問題として世に出るようになった最大のきっかけはTwitter」(ブログ「部活動のあり方はおかしい!」より)と振り返る。 Twitterでいざ声を発してみると、同じ思いをもっている人が意外とたくさんいることに気づく。そして先生たちが一人ひとりつながりながら、輪が大きくなっていった。 部活動改革を目指す新たな連携である「部活改革ネットワーク」(2017年4月設立、教員約60名から成る)は、まさにTwitterを活動基盤にしている。匿名の教員が地域を越えてつながり、部活動改革のための知恵と戦略を共有している。