<16カードここに注目 センバツ交流試合>好投手擁する初陣対決 鹿児島城西は打線、加藤学園は足もカギ 第3日第2試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。12日の第2試合で対戦する鹿児島城西(鹿児島)と加藤学園(静岡)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する。※全国大会出場回数は今春のセンバツを含む。 【ダイエー、西武、阪神で活躍】鹿児島城西率いる佐々木誠監督 ◇打線が要所でつながる鹿児島城西 加藤学園の合言葉は「肥沼を援護」 鹿児島城西は八方悠介、前野将輝の2人の好右腕を擁し、加藤学園には絶対的なエース右腕・肥沼竣がいる。新顔同士、互いの投手が実力を発揮すれば接戦が見込まれ、プラスアルファの特長を出せるかどうかが勝負の行方を左右しそうだ。 鹿児島城西の八方は直球に威力があり、スライダーが武器の前野は奪三振率が高い。ともに完投能力を備え、今大会の主力投手防御率のベスト10に名を連ねる。仮に本調子でなければ継投策に切り替えられるのは優位な点だ。チーム打率は特別に高くはないが、九州大会では1回戦で7点、準々決勝で8点を奪うなど、要所でつながりを見せた。佐々木誠監督は「我々の野球をやれればいい」と淡々と語る。 加藤学園は、まずは肥沼の出来がポイントになる。米山学監督は相手投手陣を警戒しつつ、「少ないチャンスをものにしなければ」と話す。カギを握るのが公式戦13試合で39盗塁の機動力だ。東海大会2回戦では延長十回に重盗で決勝点を奪うなど、足を絡めた大胆な攻めもできる。相手投手や守備をかき回し、チームの合言葉「肥沼を援護する」を実現して大黒柱を助ければ、勝利が近づく。【森野俊】 ◇八方と前野「二枚看板」 佐々木監督の下、自主性と責任でチーム力向上 鹿児島城西 プロ野球で首位打者や盗塁王に輝き、2018年1月に就任した佐々木誠監督の下、春夏を通じて初の甲子園切符をつかんだ。19年秋の九州大会は2試合に零封勝ちして4強入り。投手力を軸とした守りの野球の中心が、右の「二枚看板」だ。 140キロ台の直球に加え、カーブやスプリットなど多彩な変化球を操る八方悠介(3年)は「直球のキレが格段に良くなった」と自信を見せる。投球回数以上の三振を奪ってきた前野将輝(3年)は得意のスライダーに加え、チェンジアップとツーシームを習得。ライバルとして競い、高め合ってきた2人は「鹿児島城西の力を見せる」と意気込む。 19年秋の公式戦は1試合平均得点が5.67、チーム打率は3割1分6厘と決して高くない。秋に1~3番に入った林誠人、乗田元気、板敷政吾の2年生トリオの出塁はポイントの一つ。主将でチームトップの打率5割8分3厘、2本塁打をマークした古市龍輝(3年)ら中軸への打線のつながりが欠かせない。 チームの特色に自主性の高さがある。「上から抑えつけるのでは伸びない」と佐々木監督。丸刈りを強制せず髪形は自由とし、練習中はグラウンドに選手が選んだJポップが流れる。だが、選手たちで練習メニューを考え、自ら動かなければ成長はない。自由だけでなく、それに伴う自主性と責任が、チーム力を高めた理由といえる。 センバツに続いて夏の甲子園の中止が決まった時は「心が折れる選手もいて、3日間は全員が脱力状態だった」と八方。それでもセンバツ交流試合の開催で、気持ちは高まっている。独自のスタイルで臨む夢の舞台へ古市は「勝ちは絶対に譲れない」と言い切った。【白川徹】 ◇鹿児島城西・古市龍輝主将の話 (加藤学園は)総合的に見てとても良いチームだと思っている。(チームは)とても良い状態に仕上がっている。1試合できることに感謝し、鹿児島城西らしい野球を展開したい。 ◇サッカー部OBに〝半端ない〟大迫勇也選手 1927年に鹿児島和洋裁縫女学校として創立され、79年から現校名。甲子園に春夏各1回出場の宮崎・日章学園と同じ学校法人が運営している。普通科、調理科、ヘアーデザイン科、ファッションデザイン科などがある。OBにサッカー日本代表の大迫勇也選手(独ブレーメン)ら。鹿児島県日置市。 ◇地元企業と市職員でチーム応援 「佐々木会」会長・末永清美さん チームを応援しようと、地元企業や日置市職員ら有志約20人で昨秋、佐々木誠監督から名前を取った「佐々木会」を発足させました。センバツ出場が決まり、さっそく「甲子園出場おめでとう」と書いたのぼり旗を100本作りましたが、5月の紅白戦でお披露目しただけで、お蔵入りも覚悟しました。センバツ交流試合出場が決まり、町の中心部に設置することにしました。 私自身は鹿児島城西のセンバツが決まるまで野球に詳しくなかったのですが「地元チームが甲子園に行けるなんて誇りだ」と応援の気持ちに火が付きました。交流試合の対戦前日には必勝と新型コロナ退散を願って花火の打ち上げを計画しています。甲子園出場で地元は元気をもらえています。 ◇「全員野球」モットーに機動力で大黒柱もり立てる 加藤学園 2019年秋の東海大会は準決勝で延長戦の末に県岐阜商に敗れたが、優勝した中京大中京(愛知)が明治神宮大会を制して「神宮大会枠」が東海地区に与えられ、春夏を通じて初の甲子園切符をつかんだ。「全員野球」を掲げるチームの大黒柱は、秋の県大会5試合、東海大会3試合を一人で投げ抜いた右腕・肥沼竣(3年)だ。 肥沼は140キロ前後の直球と変化球の制球力を武器とし、スタミナも十分。県地区予選を含めれば公式戦13試合のうち12試合に登板して10完投、防御率2.05と安定感もある。 チーム打率は2割7分9厘で出場校の中で下から2番目、1試合平均5.08得点は下から4番目と爆発的な攻撃力はないが、1点差の接戦を5試合ものにするなど、しぶとさがある。出場校中3位の1試合平均3盗塁と機動力で相手を揺さぶり、チーム最多4本塁打の大村善将(3年)、チームトップの打率3割9分5厘の杉山尊(3年)ら主軸に回したい。 新型コロナウイルスの影響で4月から約2カ月間、部活動を自粛し、その間は各自で基礎体力作りを徹底してきた。6月に全体練習が再開され、全員で野球ができる喜びをかみしめている。社会人野球のホンダで日本選手権準優勝の経験がある米山学監督からセンバツ交流試合の開催を知らされた選手たちは「はい」「はい」と監督の一言一言にハキハキと応え、笑みをこぼした。主将の勝又友則(3年)は「3年間積み重ねた全員野球をぶつけたい」、肥沼も「思い出作りではない。3年間の成果を出す」と勝利を目指す。 米山監督は「チャンスをいただいた。選手は仲間のために好きな野球を思い切りやってほしい」と期待を寄せる。【深野麟之介】 ◇加藤学園・勝又友則主将の話 (鹿児島城西は)投打ともにレベルが高いチーム。久しぶりに全員で野球ができることに感謝している。今まで支えてくださった方に、(試合に勝って)校歌を歌って恩返しできるよう頑張りたい。 ◇陸上も全国区 OBに青学大・下田裕太選手ら 1926年に沼津淑徳女学院として創立。沼津女子などへの校名変更を経て、77年に現校名に改称された。83年に男女共学となり、野球部は96年に創部された。OBに高橋朋己投手(西武)ら。陸上部も全国レベルで、青山学院大時代に箱根駅伝で3年連続区間賞の下田裕太選手らを輩出した。静岡県沼津市。 ◇「聖地での活躍祈る」沼津市長・頼重秀一さん 新型コロナウイルスの感染拡大で中止となった第92回選抜高校野球大会の出場32校の試合機会を設けるため、8月に2020センバツ交流試合が開催されることが決定したことに、日本高校野球連盟の決断に心より感謝します。 春の選抜大会出場が決定していながら諦めざるを得なかった、加藤学園高校硬式野球部の選手、家族、学校関係者の皆様には、これ以上の朗報はないものと思います。 選手の皆様にとって甲子園は、まさに憧れの聖地です。沼津市としても、選手の皆様が、甲子園という晴れの舞台で活躍されることを、心よりお祈りします。