日銀・多角的レビュー③:非伝統的金融政策の効果と副作用のバランスの取れた分析を
副作用について外部意見の紹介ではなく日本銀行自身による実証分析を
前稿でも指摘したよう(コラム「日銀・多角的レビュー②:経済・物価環境は本当に変わったのか?」、2024年12月17日)、輸入物価上昇のショックが次第に薄れていけば、賃金・物価環境はそれ以前の状態に戻っていき、物価上昇率は目標値の2%を大きく下回るようになるのではないか。その際には、日本銀行に対して、マイナス金利政策、資産買い入れ、イールドカーブ・コントロール(YCC)を大規模に再導入することを求める声が高まる可能性がある。 それに備えるためには、非伝統的金融政策の副作用についてもしっかりと分析を進めておき、仮に経済・金融情勢が悪化し、再び非伝統的金融政策の導入を余儀なくされる局面でも、異次元緩和のように効果と副作用についての精緻な分析がなされることなく、多くの政策を重ねて乱発するような事態に陥ってはならない。このことから、今の時点で、効果と副作用のバランスが最善となる非伝統的金融政策を選択できるように、知見を蓄積しておく必要があるのではないか。 多角的レビューのとりまとめで日本銀行は、非伝統的金融政策の副作用については、外部の意見を紹介する形で、効果の分析と一定のバランスを取り繕う可能性が考えられる。しかし、そうではなく、日本銀行自らの実証分析によって、副作用についても明らかにしておくことが重要である。 また、物価高懸念を促すことで個人消費の安定を損ねている足元の円安についても、異例の金融緩和がもたらした副作用の一つと認識し、非伝統的金融政策と円安との関係についても、分析を深める必要があるのではないか。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英