日本の海外支援は「都市鉄道」こそ強みが生かせる ジャカルタの地下鉄が日本式を広める「先生」に
MRTJの社員は旧来のインドネシアの鉄道会社とは一線を画す。当初の幹部は、石油会社をはじめとする有力企業から流れてきた人たちがほとんどを占め、シンガポール系インドネシア人が多数活躍した。今や、MRTJはジャカルタの就活大学生の人気企業ランキング上位に位置するほどになっている。MRTJがインドネシアの地方都市、そしてアジア各地に都市鉄道の運営ノウハウを展開していくことは、立ち上げに関わった日本の関係者も鉄道マン冥利に尽きるのではないだろうか。
■都市全体を考えているのは日本だけ ――先ほどお話に出たプレFS(「インドネシア国地方主要都市における都市公共交通システムに関する情報収集・確認調査」)は、スラバヤ、メダン、バンドン、スマラン、マカッサルの5都市の中の1つという位置づけでした。 安井:MRTはスラバヤ市だけだ。南北線については、日本と同じ狭軌の架線方式がおそらくいいのではないかと思っている。南北線は既存の国鉄(KAI)線と並行して走り、起点も終点も国鉄の駅と重なるので、相互乗り入れできると便利だ。その可能性は残しておきたい。
――欧米のコンサルは、鉄道計画を策定するときに都市全体ではなくプロジェクト単位でしか見ていないといわれ、規格や乗り継ぎも含めてバラバラの状態になってしまいます。一方で日本は都市の全体計画で捉え、マスタープランを作成するのに長けていると聞きます。日本は「インドネシア国ジャボタベック都市交通政策統合プロジェクト(JUTPI)」に長らく協力しており、現在第三期を実施中です。日本はインドネシア主要都市の都市交通開発に今後どのように関わっていくのか、展望をお聞かせください。
安井:そもそもマスタープラン、全体計画にそれほどのリソースをかけて作ることを支援しているのは日本くらいしかないと思う。全体像を描けるのは日本の援助の利点ではある。ジャカルタのMRTも南北線、東西線だけではなく10路線くらい計画があり、マスタープランで提案されている。それに基づいて、南北線と東西線は日本の支援だが、平行して韓国が南のほうをやっているという展開もある。日本が援助したマスタープランに沿って実施していくことになるのではないか。