日本の海外支援は「都市鉄道」こそ強みが生かせる ジャカルタの地下鉄が日本式を広める「先生」に
もう一つはTOD(公共交通指向型開発)で、JUTPIの第三期でやっている支援だ。これの対象はブカシバラット、デポックバル、ブロックM。そのほかに対象としてドゥクアタス(編注:いずれも駅名)を挙げてもらっている。ドゥクアタスはMRT、LRT、国鉄(KCI)、空港線が今はなんとなくつながっているが、うまく結節できるといいかなと思う。円借款でできればいいし、もちろん民間でできるのであれば民間でというところだ。
■都市鉄道の運営に税金投入は必須 ――東西線の完成は10年後、全線開業はだいぶ先になるかもしれませんが、その先、日本はどういったところに関わっていくことになるでしょうか。大きなインフラよりTODのようなものが増えていきますか。 安井:インフラも引き続きやっていくのではと思う。スラバヤの南北線も念頭にあるし、インドネシア側からバリのLRTなどもやってくれないかという話がある。また、東カリマンタンの新首都の鉄道についても関心はないかという話は来ている。リソースが日本側にもJICAにもあって、かつ日本の技術などを生かせるものがあれば取り組んでいくのはありかと思う。
――ジャカルタは首都で予算があるので今回のMRTのようなスキームで実施できますが、地方都市は難しいのではないでしょうか。 安井:スラバヤの場合、地元の東ジャワ州政府にお金を貸し付けないと難しいだろう。また、中央政府の負担をどうするかというところで、政府がどれくらい重要視してくれるかどうか次第だ。 ジャカルタMRTも、コンパス(インドネシアの日刊紙)か何かに費用を返済できるのかと書かれたことがある。地下も掘らないといけないし、その割に運賃は普通の鉄道に揃えなければならず、なかなか難しい。そこは税金を投入して、できるだけ力のある方に負担してもらうしかないかなと。
――インドネシアの都市鉄道は運賃が安いので、もっと上げてもいいと思いますが。 安井:あとはどれだけ利用してくれるか。政府の負担を減らそうと考えれば運賃を上げればいいが、プロジェクトの効果を高めようとしたらタダのほうがたくさん乗る。考え方にもよるが、安いほうが社会的な公正は高まるのかなと思う。 ■日本の強みを発揮できる都市鉄道整備 <筆者解説>高い運賃設定から独立採算が可能と判断されたジャカルタ―バンドン間の高速鉄道は政府負担なしでPPPスキームによる建設、運営となった。一方、都市鉄道は低所得者の足を守るという理由から極めて低運賃に抑えられており、運賃の半額相当を中央政府やDKI(ジャカルタ首都特別州)からの補助金によって賄っている。税金投入なしでの運行は不可能だ。