「渡航中止勧告」のモスクワは本当に“危険”な地域…? まばゆい電飾、安い物価――モスクワの「へ~」
■西側制裁でモスクワは物価が「下がった」…?
話をモスクワの生活に戻そう。23年11月末、ロシアの経済紙「コメルサント」が、こんな記事を掲載した。 「国際的な制裁措置の結果、ルーブル(ロシアの通貨)が大幅に下落したモスクワとサンクトペテルブルクでは、生活費の格付け評価が最も低下した」 つまり、モスクワとサンクトペテルブルクの物価は、世界的に見ても相対的に高くない…というのである。 調査はイギリスの「EIU(=エコノミスト・インテリジェンス・ユニット)」が行った。それによると、モスクワは22年は世界37位だったのが、23年は142位に下がった。ロシア第2の都市・サンクトペテルブルクは73位から147位になり、いずれも世界的に見て物価は高くないらしい。 EIUの分析では「両都市の物価は、それぞれ5.9%、6.6%上昇したが、ルーブルが約60%下落したことで相殺された結果」なのだという。 ただ、外国為替と関係のない生活をしている一般のロシア人にとっては、ルーブルの下落は影響がない。国内では、この1年の物価指数の上昇率は約6.6%(ロシア統計局)であって、生活者はジワジワと物価の上昇を感じている。 23年12月14日に行われたプーチン大統領との「国民対話」では、年金生活の女性が「卵が高すぎる」とクレームをつけ、プーチン大統領も「謝罪します」と述べて、価格の上昇を認める場面もあった。 参考までに、NNNモスクワ支局周辺の価格を紹介する。 ●理容(45分カットのみ):2000ルーブル(約3000円) ●地下鉄(1回):65ルーブル(約102円) ●飲料水1リットルボトル:55ルーブル(約86円) ●卵1個:12ルーブル(約19円) ●レタス1玉:130ルーブル(約204円) ●国産ビール500ミリリットル:65ルーブル(約102円) ●ハンバーガー(旧マクドナルド)1個:62ルーブル(約97円) ●和食店ラーメン:640ルーブル(約1005円) 参考だが、EIU調査で「世界で最も物価が高い都市」とされたのはシンガポールとチューリヒ。一番安いのはシリアのダマスカスだった。東京は22年の37位から60位へのランクダウンで、相対的に安くなったとされている。