「パワー半導体」攻勢の準備は整った…住重、製造装置を子会社に統合する狙い
住友重機械工業は半導体製造装置分野での競争力を高める。2025年1月から半導体製造装置などを手がけるレーザー装置事業と子会社の住友重機械イオンテクノロジー(東京都品川区、月原光国社長)を統合する。製造装置を一つの会社に統合することで投資効率を高めるとともに、互いの商圏を活用して拡販する。特にパワー半導体に焦点を合わせ、グローバルで伸びる市場を勝ち抜く覚悟だ。(小林健人) 「イオン注入とレーザーアニール。二つは隣り合うプロセスだ。親和性もある」。月原社長はこうメリットを話す。 住友重機械イオンテクノロジーが手がけるイオン注入装置はウエハーにリンやボロンといった不純物イオンを打ち込み、電気特性を変化させる。その後、ウエハーをレーザーなどでアニール(熱処理)してウエハーの結晶性を回復させる。当然、イオン注入装置と住友重機械のレーザーアニール装置は合わせて使うのが一般的だ。事業統合によって隣り合うプロセスの装置をソリューションとして提案する構想を描く。 成長市場として狙うのがパワー半導体だ。電気自動車(EV)には電力制御を行う同半導体が欠かせない。特に炭化ケイ素(SiC)パワー半導体はEVの普及に伴って成長するとされ、経済産業省の資料によると30年の市場規模は21年の1400億円から膨らみ、3兆円の大台を突破する見通し。 住友重機械イオンテクノロジーが25年にも投入予定のSiC向けのイオン注入装置に加え、SiC向けのレーザーアニール装置を市場攻略の戦略装置に位置付ける。住友重機械メカトロニクス事業部の千田剛史装置機種統括部長は「今はEV市場の鈍化が見られるが、27年ごろには再成長する」との展望を話す。再成長の時期に合わせて「半導体メーカーへの導入を目指す」。 また、統合によって顧客基盤も拡大する。同時に住友重機械はフランスの半導体製造装置メーカーの買収を予定する。手がけるレーザーの違いからカバーできる装置の範囲が広がるとともに、これまで参入できていなかった欧州の橋頭堡(ほ)を確保する。月原社長は「どちらかの装置しか導入していない顧客も多い。統合でこれまで『未知の』顧客だったのが、『既存の』顧客に変わる」と話す。 住友重機械は現中期経営計画で半導体を重点投資領域に位置付ける。統合と買収によって成長するパワー半導体市場を攻める準備は整った。