シンプルだけど大事なセイバーメトリクスの指標「OPS」
セイバーメトリクスの進化系WAR
従来は、MLBが発表する安打、本塁打などの「数字」に基づいて選手を評価したが、セイバーメトリクスの進化形では、選手を「リーグの平均的な同じポジションの選手に比べてどれだけ勝利に貢献しているか」を数値化した。 さらに従来は比較できなかった「投手」と「野手」を、同じ指標で比較しようと試みられた。 また、守備能力も数値化して加味することが可能になった。 こうして選手評価の最終的な指標と言われるWAR(Wins Above Replacement)が生まれた。 WARはRCなどよりもはるかに複雑な計算によって求められる。 今、WARはBaseball ReferenceとFanGraphsという二つのサイトが発表している。 それぞれをrWAR、fWARと略称している。 二つのサイトのWARは、投手の評価や守備成績の算出基準などが異なっているので両者の数字は微妙に異なっている。 今、MLBのMVP投票では、有権者である記者たちは一般的な打撃成績や投手成績ではなく、rWAR、fWARを重視している。 このように選手評価に関する指標はこの20年ほどの間に劇的に進化したが、実はそれでもOPSは、信用するに足る打撃指標として、大いに重要視されているのだ。 それは、OPSがRCやWARの評価とほぼ同じ傾向を示すことが多いからだ。
OPS、RC、WARとMLB
昨年のアメリカン・リーグのMVP投票で1位、2位の選手の、OPSとRC、rWAR、fWARの数字を並べると以下のようになる。 ■アメリカン・リーグ 1.大谷翔平(エンゼルス)420.0ポイント 打撃)151安打44本塁打95打点20盗塁 打率.304(5位) 投手)10勝5敗 防御率3.14 OPS1.066(1位) RC 138(1位) rWAR 9.9(1位) fWAR 8.9(1位) 2.コーリー・シーガー(レンジャーズ)264.0ポイント 打撃)156安打33本塁打96打点2盗塁 打率.327(2位) OPS1.013(2位) RC 116(3位) rWAR 6.9(3位) fWAR 6.3(2位) 大谷翔平は他の選手ではありえない「二刀流」だったために投手としてのWARが加算されている。投票でも1位票満票の420ポイントを獲得した。 しかし指名打者の大谷は守備のWAR評価はマイナスになる。また、最近の傾向では投手はWARが高くてもサイ・ヤング賞に回ることが多い。アメリカン・リーグで投手として最もWARの数値が高かったヤンキースのゲリット・コールは、投打含めて3位に相当するrWAR7.4、fWAR5.4を記録したが、MVP投票では11位の30.0ポイントに終わった。しかしアメリカン・リーグのサイ・ヤング賞に選ばれている。 ■ナショナル・リーグ 1.ロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)420.0ポイント 打撃)217安打41本塁打106打点73盗塁 打率.337(2位) OPS1.012(1位) RC 168(1位) rWAR 8.2(2位) fWAR 9.0(1位) 2.ムーキー・ベッツ(ドジャース)270.0ポイント 打撃)179安打39本塁打107打点14盗塁 打率.307(3位) OPS.987(3位) RC 148(3位) rWAR 8.3(1位) fWAR 7.7(3位) アクーニャJr.がア・リーグの大谷翔平同様、満票を獲得したのは史上5人目の40‐40(40本塁打40盗塁)をクリアしたと言うインパクトが、多くの記者の心理に影響したためだ。 記者投票の場合、こういうデータ以外の要素が影響することもあるのだ。