黙々と作業するのは得意だが空気を読むことが苦手な20代の男性…社会に出てからグレーゾーンが発覚したケース
「発達障害」「グレーゾーン」という言葉を聞く機会が増えている。なかでも、「グレーゾーン」は社会に出てから気づくケースが多いという。 【画像】会議での発言やプレゼンは望んだ環境ではなかった 行政機関や民間企業などで約1万人をカウンセリングしてきたストレスマネジメント専門家の舟木彩乃さんは、その中で発達障害やグレーゾーンの傾向にある上司や部下もいると話す。 特にグレーゾーンは発達障害とは少し違う特性があり、上司は部下の対応に悩み、“パワハラ”にならないように細心の注意を払っていると、疲れ果ててしまうこともあるそうだ。 発達障害グレーゾーンの部下を持った人に向けて、その特性の解説や対処法を記した著書『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)から、社会に出てから発覚するケースを一部抜粋・再編集して紹介する。
社会に出てから発覚することが多い
近年、社会に出てから初めて発達障害を疑い、精神科や心療内科を受診する人が増えています。企業でカウンセリングをしていても、「自分は発達障害かもしれない」という悩みを抱えて相談にくる人が少なくありません。 メディアなどで頻繁に発達障害が取り上げられることも影響しているでしょうが、社会構造が複雑になり、適応できない場面が増えてきたことも一因ではないかと思われます。 筆者のところに発達障害を疑ってカウンセリングにくる人は、比較的若い世代が多いように感じます。 学生時代は環境に適応できていたけれど、社会に出てから適応が難しくなり、ネットなどで調べると発達障害の特性が自分に当てはまるので心配になったという人が多いです。 発達障害は脳機能の発達に関する障害で先天的なものとされていることから、気づいていなかっただけで、社会人になって初めて発達障害を発症することはありません。 グレーゾーンはなおさら、社会に出てから発覚することが多いといえます。
黙々と作業するのは得意だったBさん
Bさん(男性20代)は、電子工学系の一流大学院を出て、主にシステム開発の仕事を担当しています。 システム開発は、頭を使って黙々と作業することが得意なBさんに合っていましたが、慣れていくにつれて担当するパートが多くなり、会議でのプレゼンや発言の機会も増えていきました。 しかし、それはBさんにとって、歓迎すべき事態とはいえませんでした。なぜなら、Bさんは周囲の空気を読むことが苦手で、社の内外を問わず知らないうちに相手を苛立たせてしまうからです。 Bさんは、会議で、自分が開発した案件のこだわりのある箇所についてだけ長々と説明したことがありました。当然、周囲は白けた反応でしたが、会議が終わってからも、忙しそうにしているメンバーに何度も同じ箇所を説明に行ったりしました。 顧客へのアフターフォローでも、簡単な質問に対しマニアックな長文メールで回答して、クレームがきたことがありました。次第に周囲から厳しく指摘されることが増え、Bさんは、コミュニケーションが上手くいかないと悩み出しました。