黙々と作業するのは得意だが空気を読むことが苦手な20代の男性…社会に出てからグレーゾーンが発覚したケース
学生時代は褒められることも多かった
Bさんの“こだわり”や“空気が読めない”というのは、社会人になって始まったことではありません。学生の頃も、クラスで“浮いている”と感じたことはあるそうですが、成績優秀だったので特に問題にはなりませんでした。 しかも、大学院では彼の“こだわり”によって緻密な論文を完成させることができ、学会で賞を獲ることもできました。担当教授から褒められることも多く、研究室では「できる人」というキャラで通っていたということです。 しかし、最近では、同僚から「そこは全然重要じゃない」などと相手にされなかったり、一生懸命回答した取引先からクレームがきたりして、自信を失うことばかりで、会社に行くのがつらいと思うようになってきたそうです。
受診して初めて発覚したBさん
Bさんは自分の特性をネットで調べ、発達障害の1つである“自閉スペクトラム症”に行きつきました。 そして、「自分は自閉スペクトラム症ではないか」と筆者に相談にきたのですが、その後受診した精神科では「その傾向がある」と言われました。 自閉スペクトラム症の特徴としては、言語以外のメッセージであるメタメッセージ(表情や声色、ジェスチャーなど)が受け取れない、固執傾向(こだわりが強い)、相手の立場に立つといった想像力が働きにくいなどがあります。 言葉によるコミュニケーションは、言葉自体によって20%、メタメッセージによって80%伝えられるといわれており、メタメッセージの読み取りが上手くいかないと“空気が読めない”ということになってしまいます。 近年、Bさんのように社会に出て初めて、この障害(グレーゾーンを含む)が自分にあることが分かったという人が増えているのです。 舟木彩乃 ストレスマネジメント専門家。公認心理師・精神保健福祉士。博士(ヒューマン・ケア科学/筑波大学大学院博士課程修了)。カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に携わる。
舟木彩乃