皇帝ネロやカエサルも愛した「放蕩と悪徳の巣窟」、温泉街の海底遺跡から貴重な大理石の床を発見
石を「リサイクル」した形跡も
大理石の床は、床面積が250㎡を超える大きな貴族の邸宅跡の見つかった。建物の形状から、バイアエが海に沈み始める直前の4世紀ごろに建てられたものと考えられている。 大理石や真珠層、ガラスなどの材料を切ってはめ込み絵や模様を作る「オプス・セクティレ」と呼ばれる技法でつくられていた。そのカラフルな模様は大理石の中でも特に高価なパボナゼットやチポリーノ、希少な灰色の花崗岩、さらにはサーペンティンやポルフィリー石など、質も色も異なる希少な石を使っていることに由来する。一方で、一部の石は別の場所に使われていたものを「リサイクル」していた可能性も指摘されている。 なお、この邸宅には高さ約10mにもなる壁があったが、それが地上にある間に何らかの原因で倒壊したため、大理石の床も損傷を受けていた。現在も調査および修復作業は続いており、大理石の一部は陸上に移して清掃および修復されているという。
その享楽的なライフスタイルから、詩人セクストゥス・プロプロティウスが「放蕩と悪徳の巣窟」と揶揄し、哲学者のセネカが友人への書簡で「贅沢の渦」「悪徳の港」と呼んだというバイアエ。そのぜいたくな生活の片鱗がいまも残る海底遺跡は、カンピ・フレグレイ考古学公園(Campi Flegrei Archaeological Park)として大部分が公開されている。今回の調査および修復作業も、同公園の考古学チームが主導したものだ。 過去の調査では浴場やフレスコ画、彫刻や円柱などが見つかっており、同公園は考古学的に貴重な遺跡であると同時に、ダイビングスポットとしても人気を博している。
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