ドイツが提唱する産業界のキーワード「Industry4.0」とは? 実現への課題は
「Industry4.0」とは何か
クラウドやビッグデータに続き、このところ産業界の注目を集めているキーワードに「Industry4.0」があります。蒸気機関の第1次産業革命、電気機関の第2次産業革命、IT導入による生産工程自動化の第3次産業革命に続くとされる、この「第4次産業革命」とはいったい何でしょうか? 「Industry4.0」とはドイツ政府と産業界の共同プロジェクトで提唱された概念(ドイツ語では「Industrie4.0」)ですが、その中身はむしろそれに先行する「CPS(Cyber Physical System」の方が分かりやすいでしょう。これは現実(Physical)の状態を一度デジタル空間上(Cyber)に取込み、そこから計算で最も合理的なやり方を予測し、それを現実(Physical)にフィードバックして効率化していく考え方です。これは人間でいえば「知覚、予測判断、実行」のサイクルに相当する、ごく普通の思考法ですが、しかしながら、このアイデアをいざ実現しようとすると、様々な技術的社会的な困難があったのも事実です。しかし、最近、ユビキタスインターネット、M2M、クラウド、ビッグデータなどの進化が起きたことから、ようやく現実化に目途がついてきた、というわけです。 これを工場などものづくりの現場に応用して製造業を中心とした産業の高度化を行うというのが「Industry4.0」のコンセプトです。そこには、単に工場の生産性をあげるだけではなく、商品の品質向上や、社会としてのエネルギー消費効率化、さらに労働者の働き方の効率化なども達成することにより、まさに「第4次産業革命」と呼ぶに相応しい社会革新を実現しようという意欲が込められています。
なぜドイツが提唱?
では、なぜドイツが「Industry4.0」を提唱するのでしょう。筆者は、生産現場の効率化を巡る国際競争が激化しているからだと考えています。 インターネット革命の中心はやはりGoogleに代表される米国企業の活動にあり、それゆえ、ネットの世界の中には様々な「米国流」が溢れています。今、その革命が、PCやスマホの領域を超えて、自動車やロボットなどの機器に波及してきています。その延長に、工場を含む産業部門の電子機器がインターネットを介して自動的に相互調整していく未来像があり、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)の「Industrial Internet」構想が発表されたり、企業連合SMLC(Smart Manufacturing Leadership Coalition)の「Smart Manufacturing」の検討が始まったりしています。 製造業では世界に冠たるドイツとしては、産業のあり方まで米国流に規定されることは好ましいことではありません。しかしながら手をこまねいていればそうした結果になることは、インターネットの世界が米国流で規定された経緯を見れば明らかです。ならば、むしろドイツが世界に先駆けてこれを実現し、むしろそれで次世代の世界の産業のあり方を規定していく。「Industry4.0」という言葉には、そういう野心があるようにも見えます。