ドイツが提唱する産業界のキーワード「Industry4.0」とは? 実現への課題は
「Industry4.0」実現への課題は
では、今、「Industry4.0」に合致する工場はあるのでしょうか。いえ、ドイツでもまだ構想段階なのですから、これが実例だ、というものがあるわけではありません。しかし、それはトヨタ自動車の「カンバン方式」に代表されるジャストインタイム(必要なものを、必要な時に、必要なだけ生産し、在庫量を制御する)などの様々なサプライチェーンマネジメントの延長にあるのでしょう。トヨタ生産方式と自動センサーを組み合わせた島根富士通の生産方法などはその近似例なのかもしれません。 しかし、これを実現するための課題は多くあり、ドイツの検討ワーキンググループは、各企業や機器が相互に通信するためのデータ形式などの標準化、自律的に動く事業が相互連携することによる管理対象の複雑化、相互接続と自動化の中における安全とセキュリティーの確保などを挙げます。どれ一つとっても簡単な課題ではなく、すぐに完全な解がでるものでもありません。 とはいえ、ITの特徴はその進化の早さにあります。初期の成果はめざましいとはいえなくても、試行錯誤の成果をフィードバックしていくことで、めきめき機能を向上させていきます。そういう意味では、「Industry4.0」への課題は、自社のやり方に対するプライドに駆られたり、全く新しい方向からの革新を学ぶ困難から、「Industry4.0」(的なもの)を軽視して従来の技術に固執せず、自らを省みてとにかくまず変わろうとする経営者と社員の意思を発揮できるか、ということなのではないでしょうか。 (国際大学GLOCOM客員研究員 境 真良)