30年続いたデフレ→インフレに。知っておくべき、日本に起こっている5つの構造変化【余命10年・岸博幸】
自由主義国家と覇権主義国家の分断
3つめは「グローバル化の変質」だ。 1989年のベルリンの壁崩壊、1991年のソ連邦崩壊、1990年代初頭からの中国の改革・開放路線によって東西冷戦が終焉し、30年ほど前から急速にグローバル化が進んできた。 結果、企業はグローバル・サプライチェーンを構築し、新興国で製造された安価な製品を世界中が享受することができた。 ところが、トランプ前大統領の時代に米中対立が経済面で始まり、今や安全保障の面にも拡大。2022年にロシアがウクライナに軍事侵攻したことで、世界の対立に拍車がかかり、自由主義の西側諸国(G7が筆頭)と独裁者が率いる覇権主義国家(中国、ロシア、北朝鮮など)の対立は激化する一方だ。 この状況は、中国の習近平が国家主席の間は、激化こそすれ改善するとは思えない。 いわば、自由なグローバル化の時代は終焉し、自由主義国家の経済圏と覇権主義国家の経済圏に分断された、ブロック化の時代に入っていくことになる。 となれば、安全保障の観点から重要な先端半導体などに限定せず、エネルギーや食料などの自国生産も、重要な課題になっていくだろう。
日本にとって大きなチャンス
第4の変化はDX(Digital Transformation)、デジタル化である。 日本は過去30年にわたって世界のデジタル化の潮流に乗り遅れ続け、すっかりデジタル後進国となってしまった。 世界のデジタル競争力ランキング(スイスのIMDが毎年作成)を見ると、日本の総合順位は32位で、1位の米国はもちろんのこと、10位以内に入っているアジアの国々にも大きく水を開けられている。 ただ、コロナ禍を機に、抵抗勢力に阻(はば)まれていた遠隔勤務や遠隔教育、遠隔医療などが一気に実現した。これは、日本にとって大きなチャンス。 AIの急速な進化からもわかるように、デジタル技術は日進月歩で、今なら、10年前よりもずっと高性能で安価なデジタル製品・サービスを導入可能だ。このタイミングで、各業界でデジタル化を普及させ、“後発者の利益”を享受できれば、日本の経済や企業の復活は、十分可能だと思う。