白井元調教師と学ぶ血統学【164】「僕の頭には常に血統がベースにある」 アグネスデジタルに見る〝真髄〟
【白井元調教師と学ぶ血統学「温故知新」】 元JRA調教師の白井寿昭氏に指南役をお願いし、様々な角度から血統を考える連載の第164回。長きにわたった〝温故知新〟の連載を総括し、血統とは何か? どうして血統が必要なのか? この難しいテーマを楽しく学んでいく方法は? 連載当初から支えてくれている〝白井信者〟の方のみならず、最近に競馬を覚えたライトファン、これから深く競馬に関わりたいと考えている人にまで伝えたい競馬の魅力。しっかりと胸に刻んでいただきたい。 東スポ競馬・関西地区本紙担当であり、白井氏との親交も深い松浪大樹記者のナビゲートを楽しめるのも残り数回。連載の最終局面をご堪能ください。
馬を見る時は常に血統がベースに
松浪大樹(東京スポーツ記者=以下、松浪)今週も「血統とは何か?」をテーマとし、長きにわたった「温故知新」のまとめをしていきたいと思います。 白井寿昭氏(元JRA調教師=以下、白井)前回も内容は良かったね。血統は自分から知ろうと思うもの。僕にピッタリやったわ(笑い)。 松浪 先生は血統に詳しい調教師と誰もが認めていますし、それで活躍もされてきました。そんな先生から「血統」という武器をゴソッと抜いてしまった場合、どうなってしまうのでしょうか? 白井 それはもう…抜け殻やわ(苦笑)。 松浪 でも、先生には他にも武器があるじゃないですか。馬体を見る目も持っていますし、それを背景に現場主義で買い付けにも行っていたわけですし。 白井 いや、それも血統というバックボーンがあってのもの。馬を見るときもな。僕の頭には常に血統がベースにあるわけ。これまでに得た知識と比較して、これならええかなとか。 松浪 先生が常に言っていることですね。「この血統だから、こんな感じの馬体」。血統なしでは馬体チェックも意味がないというか、できないわけですか。 白井 そういうこと。アグネスデジタルを見つけてきたときも、ちゃんと血統を考えてたよ。あれは本当にいろいろと考えたわ。 松浪 クラフティプロスペクターの産駒ですからね。天皇賞・秋を勝つようなイメージの血統ではない。 白井 そう。普通に考えたら1200メートルやし、最初はそういう感じやろうと思ってた。でも、あの馬の血統には距離をこなせる馬がいて、そこも最初からチェックしてたよ。もしかしたら、こなせる可能性があるかもしれんなって。そういうことも考えておく。とても大事なこと。 松浪 このコラムを熟読してくれている白井信者の方はスッと出てくると思いますけど、その距離をこなせる馬はチーフズクラウンでないんですよね(苦笑)。 白井 チーフズクラウンもええよ。悪くない。悪くないけど、あれは結局のところダンジグやからな。掛け合わせの相手はクラフティ。距離が持たない可能性のほうが大きいやん。普通はそう考えると思う。 松浪 そこで出てくる馬の名前がアレッジドでした。 白井 あれも実際に馬を見てる。アレッジドを馬房から引っ張ってきた人のロープ。これが止まってることが少なくてな。ずっと動いてんの。「めちゃめちゃうるさい馬やん」と思ったわ(苦笑)。