白井元調教師と学ぶ血統学【164】「僕の頭には常に血統がベースにある」 アグネスデジタルに見る〝真髄〟
アグネスデジタルを見極めた〝要因〟
松浪 アレッジドがそこまでうるさい馬で、チーフズクラウンはダンジグの血統。そこにクラフティと重ねているのに…。どうしておとなしかったんでしょうね、アグネスデジタルは(苦笑)。 白井 それ、僕もずっと思っとったことやねん。どこでミックスしたら、こんな感じになるんやろうって。でも、デジタルは初めて見たときから本当におとなしかった。だから、ちょっと不思議に思って。そこも魅力に感じたんやわ。 松浪 アグネスデジタルの毛色は栗毛。そこはクラフティですよね? 白井 そうかもしれんし、そう思っとるけど、チーフズクラウンも母系は栗毛。チーフズクラウン自身は違うけどな。 松浪 おとなしいアグネスデジタルを見て、気性の激しい馬たちの影響は受けていないかも…とは思ったんですか? 白井 さっきも言ったけど、毛色を見て「クラフティが出てんのかな」とは思ったよ。松浪君は知ってるけど、デジタルは初子やねんな。初子らしく小さいのは小さかった。でも、おとなしいことのほうが頭に残ってるというか、印象が強かったわけ。「へえ、初子やのに、こんなにおとなしいんかあ」って。その記憶がさ。 松浪 初子は少しうるさくて、体は小さく出やすい。そういったベースになる知識も欲しいところですよね。馬を探すにあたっては。 白井 一般的な傾向として、そういうことは知っておいて損はないと思うよ。馬を見るときに先入観っていうの? そういうものは常にあったし、デジタルを見たときも同じ。まずは血統を確認して「こんな感じやろうな」と。で、出てきた馬を見る。それで比較してさ。 松浪 豊富な知識による先入観があって、見た目も栗毛なのに、アレッジドに目を向けた。そこがさすがだな…と僕は思ってしまいます。見えない部分に期待するわけですから。 白井 体はもちろん、表立った性格に影響が出てなくてもな。馬の中にあるかもしれへん。見た目は栗毛でクラフティっぽいよ。でも、性格はおとなしくて。クラフティだけという感じでもなかったから。そこがね。引っ掛かったというか、ピンときた。 松浪 可能性を探ることが大事なんですね。そして、仕事として馬を見るのであれば、知識量の差は大事になってくることを再確認します。豊富な知識があるからこそ、様々な可能性を考えられるわけで。 白井 似てる、似てないだけで考えるのでなく、いろいろな要素から可能性をちゃんと探る、考える。でも、それも知識がないと想像できひんやん。だから、知っておくことが大事になってくるし、実際に馬を見てな。本とかだけでない自分だけの知識。それが差になってくると思ってたし、だからいろいろな馬を見に行ったし。 松浪 受験における英単語みたいなものかもしれませんね。知らないと読めないし、問題も解けない。 白井 そうやな。近いと思う。 松浪 でも、知識を増やすことに楽しみというか、学んでいくことの喜びが欲しいところですよね。英単語みたいに覚えることが苦痛になってくると自分の中に根付かないし、やりたくなくなるでしょうから。 白井 前回にも言ったけどさ。興味をどれだけ持つか? 血統の魅力は探求心と言ったけれど、血統を勉強することに関してもそうやねん。知りたいなあと思う気持ち。これがないとな。