映画『マインクラフト』は“マインクラフトらしさ”があるのか? 期待と不安が半々の予告編
“世界一売れたゲーム”として知られる『マインクラフト』初の実写映画『マインクラフト/ザ・ムービー』の予告編とティザービジュアルが全世界同時解禁され、日本でも2025年に公開されることが発表された。『ナチョ・リブレ 覆面の神様』などで知られるジャレッド・ヘスが監督を務め、ジェイソン・モモア、エマ・マイヤーズ、ダニエル・ブルックス、セバスチャン・ユージン・ハンセン、ジャック・ブラックといった豪華キャストが主要な登場人物を演じる。 【動画】映画『マインクラフト/ザ・ムービー』予告編 『マインクラフト』といえば、日本でも絶大な人気を誇るサンドボックス・ゲームであり、木や石などの資材を採取して家具や武器、建造物をクラフトしたり、襲いかかってくる敵から身を守ったりしながら、決められた目的のない世界で自由に楽しむ作品だ。実質上のラスボスであるエンダードラゴンのような驚異的な敵こそ用意されているものの、ゲームを楽しむ上では必ずしも戦う必要はなく、むしろ自由な発想のもとに巨大な建造物を作ったり、友達と一緒に未知の場所を探検したりといった楽しみ方のほうが、きっと一般的だろう。そんな“物語のない”『マインクラフト』が映画化されるということで、初報の頃から、多くのファンは期待と不安が入り混じった感情を抱いていた。 実際に予告編を観た感想としては、少なくとも一人の原作プレイヤーとしては「困惑」というのがもっとも素直な印象かもしれない。美しい『マインクラフト』の世界が画面いっぱいに広がる光景にはワクワクさせられるが、映画化にあたってローポリゴンな原作と実写のバランスを取るために採用されたであろうCGアニメのようなアートスタイルは、コミカルに動くクリーパー(緑色のモンスター)は好印象でありつつ、フォルムはそのままに表情だけがリアルになった羊はなかなかに不気味である。 また、原作における主人公(というよりデフォルトスキン)であるスティーブといえば、基本的には台詞もなくカクカク動くのみという、徹底的に没個性なキャラクターとして知られている。というわけで、映画版のスティーブを演じるジャック・ブラックがアグレッシヴに自己紹介する予告編のワンシーンのみで、恐らくはすでに原作を超える個性が生まれてしまっており、これを受け入れるかどうかは判断に困ってしまう。謎のポータルから『マインクラフト』の世界に辿り着いてしまったという4人組(ジェイソン・モモア、エマ・マイヤーズ、ダニエル・ブルックス、セバスチャン・ユージン・ハンセン)については、現時点では詳細は不明だが、4人の生み出すシナジーや、エネルギッシュなモモアの姿に期待したいところだ。 現時点では期待と不安が半々ではあるが、予告編の時点で「映画化」という判断自体を否定するのは時期尚早だろう。『マインクラフト』から物語を生み出そうという試みは、これが初めてではなく、同作の世界観を拡張したスピンオフ作品(『Minecraft Dungeons』や『Minecraft Legends』など)や、同作の世界で繰り広げられる冒険を描いた『マインクラフト ストーリーモード』といったゲームはもちろん、グラフィックノベル版『Minecraft』や現在もコロコロコミックで連載中の『MINECRAFT~世界の果てへの旅~』など、さまざまなメディアミックス作品が存在する。 こうした作品群に共通しているのは、『マインクラフト』が内包している「自由な創造力を活かしたクラフトと、仲間との団結によって、未知の困難に立ち向かう」という王道かつ普遍的なテーマであり、それは今回の映画版にも通ずるものだろう。クラフトという要素を活かした見事な映画化作品といえば『レゴ・ムービー』が挙げられるが、映画版『マインクラフト』についても、原作が持つ「自由な創造力を活かす」という面白さがしっかりと描かれることに期待したい。予告編でもモモア演じるギャレットがクラフトする場面を確認できるが、ただモノを作るだけではなく、あっと驚くような独創的な建造物や、みんなで力を合わせて一つの巨大な何かを作るような展開が用意されていれば、より『マインクラフト』らしい面白さを感じられるはずだ。 また、今回の予告編ではクリーパーやピグリン(豚のようなモンスター)といった敵キャラクターや、羊などの動物の姿を確認することができたが、『マインクラフト』には他にも村人やエンダーマンといったユニークなキャラクターが存在するし、スティーブが登場するのならば、もう一つのデフォルトスキンであるアレックスの参戦にも期待したい。なんといっても、最大の脅威であるエンダードラゴンはどのように描かれるのだろうか。興味は尽きない。
ノイ村