「オファー来れば五輪で踊る」。SNSで盛り上がる“マツケンサンバ待望論”に松平健がいま思うこと
近く、『暴れん坊将軍』のテーマ曲に自作の歌詞をつけ、侍たちを引き連れて“上様”が踊る新作YouTube動画を公開するという(現在公開中)。テーマは「日本への応援歌」。本人が提案した肝いり企画だと自信をのぞかせる。 「やっぱり見てくれる人がいる、楽しんでくれる人がいるから、新しいこともやれるんです。YouTubeもコロナ禍で直接会えないファンの皆さんのためにはじめましたから」 ブレない“お客さんファースト”の姿勢が、いつも日本を笑顔にしてきた。 松平健から放たれる、常人ばなれした浮遊感とおもしろさ。つかみどころのない魅力の正体とは何なのかーー。考えてみれば、あまりにも長い間、上様を演じ続けた彼は役を内面化し、殿上人だけがもつ「高貴なる飄逸」をまとうに至ったのかもしれない。いわば、松平健自身が上様なのだ。上様にとっては民の幸せこそが最上の喜び。奇をてらうつもりなどさらさらなく、本気に大真面目に、民の笑顔を願っている。 くだんの大晦日のバラエティー番組で共演者たちを爆笑させたが、プライベートでは「2歳になる孫の表情にいつも大笑いしています」と柔和にほほえむ。息子が幼い頃は毎朝手作り弁当を作って送り出していた。「コロナ禍での自粛中、ずいぶん家族と過ごす時間が増えました」。いま演じたいのはホームドラマのおじいちゃん役だという。
「オファーがあれば、五輪で踊る」
最後にやはり聞かねばなるまい、東京五輪への“マツケンサンバ待望論”について。開幕後もSNSには「ともあれ無事に終わって、閉会式にマツケンさんが現れますように」「開会式騒動以来、毎日マツケンサンバ聴いてる。大概のことがどうでもよくなる」「みんなでハッシュタグリツイートキャンペーン張って閉会式にマツケン呼ぼう!」と熱い投稿が多い。 松平は、冷静に語る。 「やっぱりコロナ禍という環境的に、東京オリパラの開催はとても不安です。病床数が逼迫するなど大事に至らなければいいのですが……。ただアスリートを応援する気持ちは変わらないと思うんですね。だからひとたびはじまりさえすれば、皆さんテレビの前で応援したりして盛り上がるとは思いますよ」 もしオリパラ期間中に『マツケンサンバII』の依頼があったなら? 「オファーがあったら? やりますよ、それは。だって、皆で踊ってくれたら最高じゃないですか。とはいえ現実問題、本当に皆で踊ったならコロナはどうなっちゃうんだろう……」 「私としては17年前に一回爆発しちゃったから」とも話す。ただ、「まだ燃え尽きてはいない」。 「こうして以前の曲を支持してもらえるのはとても幸せなこと。私にできるのは、芝居と歌だけですから」 ヒャダインは、『マツケンサンバII』の魅力をこうも述べている。 「サンバで(歌詞に登場する)ボンゴは使わない。オレ!はフラメンコだし、そもそも楽曲自体がサンバじゃない。でもサンバなんです、これでいいんです!」 五輪を巡る一連のトラブル、終わりの見えない自粛生活、誹謗中傷でギスギスするSNS空間……。いま、何かと元気不足な日本の民を救うのは、そんなマツケンのおおらかさ、なのかもしれない。 --- 松平健(まつだいら・けん) 1953年、愛知県生まれ。1974年に勝新太郎が率いる勝プロダクションに入る。1975年『座頭市物語 心中あいや節』でデビュー。1976年に昼ドラマ『人間の條件』で初の主人公を演じる。1978年には代表作『暴れん坊将軍』の主役・徳川吉宗役に抜てき。2004年に「マツケンサンバII」が大ブレイクする。『草燃える』『元禄繚乱』『利家とまつ』『義経』『おんな城主 直虎』など多数の大河ドラマに出演。2020年にはYouTubeチャンネル『マツケンTube』とTikTokを開始。2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では平清盛を演じる。 城リユア ライター/編集者。社会課題やライフスタイル、エンタメに関する記事・インタビューを中心に執筆している。