時価総額9兆円に迫る「ドージコイン」を支える熱狂とコミュニティの力
「コミュニティ」の力
ドージコインのメリットの1つは、取引速度が速いことで、ビットコインが1秒あたり7件のトランザクションを処理するのに対し、ドージコインは1秒あたり約33件を処理できる。トークン発行の仕組みとしては、ドージコインは固定報酬システムを採用しており、1ブロックあたり1万DOGEを報酬としてマイナーに付与する。このため、年間約50億DOGEが新たに供給されることになる。この供給方法により、インフレ率は供給量が増えるに従って徐々に安定して低下していく。2024年11月時点でのドージコインのインフレ率は約3.4%で、流通供給量は約1460億DOGEに達している。 ドージコインは、「安価で速いが、セキュリティが弱いビットコインの代替手段」と説明されることが多い。しかし、このコインは、ライトコインやビットコインキャッシュなどの他のビットコインから派生したコインとは異なり、コミュニティの力によって独自のポジションを確立している。 ■「コミュニティ」の力 ドージコインのコミュニティは、集団のエネルギーを慈善活動や破壊的な行動の両方に活用してきた。あるドージコイン愛好家は、2014年にジャマイカのボブスレーチームのために、彼らが冬季オリンピック参加費用として3万ドル(約461万円)を調達するのを手助けした。また、同年、NASCARドライバーのジョシュ・ワイズをスポンサーするために5万5000ドル(約845万円)が、さらに「Doge4Water」と呼ばれるキャンペーンでは、ケニアの人々に清潔な水を供給する井戸を建設するために3万ドル(約461万円)以上がドージコインのコミュニティで集められた。 一方、このコミュニティは、2021年の株式市場における「ゲームストップ株騒動」にも関与した。ドージコインの保有者は、掲示板レディットの個人投資家たちと協力して、ゲームストップの株価を急騰させ、大手ヘッジファンドに巨額の損失を与えた。 ■マスクが果たした役割 イーロン・マスクは、2019年にドージコインを支持し始め、このコインが日常の取引に活用できると主張した。後にテスラでは、ドージコインを使ってテスラの車両を除く公式グッズの購入が可能になり、スペースXもドージコインを用いて観測機器の資金調達を行う宇宙ミッションの「DOGE-1」を発表した 2021年には、マスクのツイートによってドージコインの価格が0.01ドルから0.65ドルへと急騰し、わずか5カ月で6400%もの価格の上昇を引き起こした。その後のベアマーケットで、ドージコインの価格は下落したが、現在は再び0.07ドルにまで上昇した。 マスクによるツイッター(現X)の買収により、ドージコインの影響力はさらに強化された。暗号資産における主要なソーシャルメディアプラットフォームであるツイッターは、2023年4月に青い鳥のアイコンを一時的にドージコインの象徴である柴犬に変えた。これを受けて、ドージコインの価格は一時30%高となった。