ロコ・ソラーレの「そだねー」の生みの親が示す、子育てや日常会話でも使える潜在能力の高め方
人間の本能をむき出しにしない
このときに勘違いしやすいのは、いくら自分に向かって「絶対に勝つ」と言い聞かせても勝てないということです。 脳科学の観点から見ると、「勝ちたい」とか「負けると悔しい」というように人間の本能をむき出しにすると、潜在能力が弱くなってうまく結果が出ないのです。 そういうときは、「自分のゴルフを見て世界中の人がああいうふうに打てばいいのかと参考になるショットをしよう」というような気持ちで勝負と向き合えばいいのです。 大谷翔平選手があれほどの選手になったのも、自分が憧れられるような、誰からも愛されるような野球選手になりたいと思っているからでしょう。 勝つためには相手よりも気持ちを強くしないといけないのは確かなのですが、いくら自分に「絶対に勝つ」と言い聞かせても勝てるわけではないのです。
相手に気持ちで負けない
似ているように思うかもしれませんが、「きょうは相手より自分の気持ちのほうが上だから自分が勝つ」と考えることが大事なのです。要するに、相手に気持ちで負けないということです。 そういう考えで勝負したら強くなると言ったら「面白い」と言ったのが錦織(圭)選手でした。彼はそれを実践するようになったら急に強くなりました。錦織選手は本当に立派な選手です。あの体力でよくやっていると思います。 技術的な高さももちろんありますが、その前提となる気持ちの強さを持っています。気持ちの力というのは勝負事においては非常に大きなものなのです。 その意味で、「きょうは自分の日だ!」というのも潜在能力を引き出す合言葉になるのです。 なぜ些細な言葉が勝負に影響するのでしょうか。脳に情報が入ると、第一段階として気持ちが動くことを説明しました。人はそこで空間認知能力を働かせ、直感的に物事との“間合い”を測るようにできています。脳科学的には、この直感を言葉で満たすことができるのです。 言うなれば、言葉とは間合いです。だからこそ、自分の間合いを正確に測るためには、脳にプラスになる言葉を使うことが重要になるのです。 林成之 日本大学名誉教授。脳科学をスポーツに応用し、北京オリンピック競泳日本代表の北島康介選手らの金メダル獲得に貢献。脳低温療法を開発し国際学会の会長も務めるなど、脳蘇生治療の第一人者としても知られる。著書に『<勝負脳>の鍛え方』(講談社現代新書)、『脳に悪い7つの習慣』(幻冬舎)などがある。
林成之