水川あさみ、櫻井翔、玉山鉄二出演「笑うマトリョーシカ」あまりに違う構成にびっくり! 原作は時系列、ドラマは過去を回想で 展開の速さや疾走感に納得も削ぎ落とされた魅力をぜひ原作で!
推しが演じるあの役は、原作ではどんなふうに描かれてる? ドラマや映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回は先の見えないサスペンスに翻弄されるこのドラマだ! 【ドラマの人物相関図を見る】水川あさみ、櫻井翔、玉山鉄二ら ドラマでの関係性を見る
■水川あさみ・主演、櫻井翔・出演! 「笑うマトリョーシカ」(TBS・2024)
わあ、初回からぜんぜん違う! あまりに違うので、まずはドラマと原作、それぞれの導入部を別々に紹介しよう。 ドラマは新聞記者・道上香苗(水川あさみ)を中心に進む。43歳の若さで入閣した衆議院議員・清家一郎(櫻井翔)の自叙伝について取材するため松山市の母校を訪ねた道上は、清家の秘書・鈴木俊哉(玉山鉄二)が高校時代から清家の親友だったと知る。それほどの付き合いの鈴木をなぜ自叙伝に登場させなかったのか? それを調べようとした矢先、道上の父(渡辺いっけい)が交通事故死。父は鈴木の父が昔かかわった汚職事件を追跡取材しており、その日、鈴木と会う約束をしていた。それを知った道上は、鈴木が手を回したのではと疑う──。 一方、早見和真の原作小説『笑うマトリョーシカ』(文春文庫)は、記者の道上が清家のもとに自叙伝の取材に来るというプロローグのあと、3部構成に入る。第1部では清家と鈴木の高校時代が、第2部では大学時代が、鈴木の視点と清家の自叙伝からの抜粋で綴られる。そして第3部でプロローグの「現代」に戻り、道上が誰からか送られてきた清家の卒論を起点に、彼らの謎を追うという構成になっているのだ。つまり、ドラマの主人公の道上は、原作ではプロローグを除けば中盤以降にようやく登場するのである。 ドラマは、原作のこの第3部から始まり、第1部と第2部を回想という形で入れ込んでいる。ドラマでは序盤で清家の卒論が送られてきたり鈴木が交通事故に巻き込まれたり、道上が清家の恩師や亡き議員の元政策秘書らに会ったりするが、これらは原作では後半のエピソードだ。そのため原作既読組にとっては展開が非常に速く感じられるのだが、よく見ると流れ自体は原作に沿っているのである。 原作とドラマで明確に異なるのは、水川あさみ演じる道上香苗の設定だ。離婚しているとか息子がいるとか、母が小料理屋をやっているとか、過去に苛烈な取材で取材対象を追い込んだことがあるとか、ましてや父が殺されたかもしれないとか、そういった彼女の個人的な背景はすべてドラマオリジナルで原作には出てこない。原作の道上は情報を整理して読者に届ける役割に徹している。