トランプ氏復権に焦る英政権 外相は過去に「ネオナチ」と批判
米共和党のトランプ次期大統領の当選確実を受け、伝統的同盟国・英国が「困惑」(米ブルームバーグ通信)の度を深めている。スターマー英首相率いる与党・労働党はもともと米民主党と友党関係にあり、現在の対米外交の「顔」であるラミー外相は、かつてトランプ氏を「ネオナチ」などと罵倒していた過去があるためだ。スターマー氏は「英米の特別な関係は変わらない」と強調し、良好な関係をアピールしている。 「歴史的勝利、おめでとうございます」。スターマー氏は6日の声明でトランプ氏に祝意を表し、英米の「緊密な同盟」は不変と強調した。 だが今回の大統領選期間中には、労働党スタッフらが民主党のハリス副大統領陣営を支援するため米国入りする計画が発覚し、トランプ氏陣営が不快感を示した一幕もあった。 労働党内には「反トランプ派」が多く、外相就任前のラミー氏は2018年、トランプ氏を「暴君」「女性嫌いで、ネオナチに同調する反社会的人物」と批判していた。同じく労働党のカーン・ロンドン市長も、今回のトランプ氏当選で多くの人々が「民主主義や女性の権利」の行方を不安視していると述べた。 ◇再選視野の備えも 一方でスターマー政権は7月の発足以降、トランプ氏の当選も視野に入れて関係構築を試みてきた。スターマー氏とラミー氏は9月に国連総会出席のため訪米した際、トランプ氏と2時間ほど夕食を共にした。 その後、ラミー氏は「(トランプ氏批判は)古いニュース」「彼は協力できる人物だ」と発言のトーンを変えている。北大西洋条約機構(NATO)の中で「欧州の防衛費支出は不十分だ」と欧州批判を繰り返してきたトランプ氏の主張についても、ラミー氏は「正しい指摘」と賛同した。 だが、トランプ氏は過去の言動を忘れない「根に持つタイプ」(ブルームバーグ通信)とも報じられており、関係修復は容易ではないとの見方もある。【ロンドン篠田航一】