世界最大級のリーク「パナマ文書」とは? アイスランドでは首相辞任に発展
中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から機密扱いだった金融取引文書が大量に流出し、オフショア法人を利用して各国の有力者から犯罪者まで、様々な面々が租税回避やマネーロンダリングを行ってきたという情報が明るみになりました。各国では首脳らが弁明に追われています。 【写真】アノニマスの「KKK支持者リスト」公表をめぐる大義と異論
2.6テラバイトのデータに40年間の内部資料
まず、今回の騒動の背景について説明しておきましょう。今から1年以上前に、ドイツのミュンヘンにある南ドイツ新聞に匿名の内部告発者が接触。情報提供者の詳細については明らかになっていませんが、この人物はパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部資料を暗号化したデータファイルで南ドイツ新聞に送り、「この法律事務所が行ってきた犯罪行為を世に知らしめてほしい」と、ファイルの公表を要求しました。そこから数か月の間に、追加資料がデータファイルで送られ、南ドイツ新聞が受け取ったファイルの合計は2.6テラバイトに達しました。 2010年にウィキリークスでアメリカの外交公電の内容が流出した際にも世界中が大騒ぎとなりましたが、この時のデータの合計は1.7ギガバイト。南ドイツ新聞に送られたデータの合計は、その1500倍以上になります。2.6テラバイトのデータには、メールだけで480万通以上あり、PDFや画像ファイルも300万点以上存在します。 英BBCは5日、1977年から昨年12月までの間に、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」と関係があった企業や信託、基金、個人は判明しているだけでも21万件以上と伝えています。モサック・フォンセカはこれまでに24万を超えるオフショア企業 の立ち上げを行ってきましたが、4日に「これまでに不正行為は一度もなかった」との声明を発表しています。オフショア取引とは、法人税や源泉所得税が皆無に等しいタックスヘイブンに資産を移し、管理・運用するもので、世界的に有名な大企業や富裕層が節税対策でオフショア取引を用いるケースは少なくありません。オフショア取引を国策として行う国も少なくなく、カリブ海のケイマン諸島や英領バージン諸島、ヨーロッパではルクセンブルグやモナコ、またアメリカでも東部デラウェア州はオフショア取引のメッカとして知られています。オフショア企業の設立自体は非合法ではありませんが、南ドイツ新聞が入手したデータでは、多くのケースでオフショア企業のオーナーに関する情報が隠蔽されていたため、マネーロンダリングや武器・麻薬の売買などにオフショア企業が使われている可能性が高いとして、調査報道が始まったのです。 しかし、データ量があまりにも膨大なため、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に協力を依頼。78か国で活動する370人のジャーナリストがデータの分析や調査に従事しました。リークされたデータの量としても過去最大規模ですが、この件で国境を越えて調査するジャーナリストの数も過去最大規模となりました。 騒動の渦中にある法律事務所「モサック・フォンセカ」がパナマにあるため、今回の情報漏えいは「パナマ文書」という名前で呼ばれています。モサック・フォンセカはオフショア企業立ち上げの分野では世界第4位の法律事務所で、1977年にドイツ生まれのユルゲン・モサック氏とパナマ人のラモン・フォンセカ・モーラ氏によって設立されました。偶然にもモサック氏が生まれたのは、前述の南ドイツ新聞があるドイツ南部バイエルン州で、ICIJが入手した資料によると、ナチスの親衛隊に所属していたモサック氏の父は戦後アメリカに渡り、パナマで米諜報機関の秘密活動に従事しており、モサック氏は幼少期から現在までパナマで生活しています。