「女性は守るべき存在」タリバンの女性抑圧政策を支える民意とは 民主化が失敗した理由は何か。これからどうなるのか【アフガン報告】6回続きの(4)
アフガニスタンなど保守的なイスラム諸国には「女性の尊厳や貞淑さを守るため」として、女性を家族以外の男性と接触させない慣習がある。女性の社会進出を妨げる考え方だが、多くの国々に定着した文化でもある。アフガンの問題点は、統治者として復権したイスラム主義組織タリバンが、女性の就労と教育を制限する政策を国家として推進していることだ。タリバンは民意の支持を得ていると主張する。本当だろうか。変化は可能なのか。(敬称略、共同通信=新里環、木村一浩) 「日本での生活は地獄になるよ」アフガンで日本のために働いた大使館の現地職員、外務省が厄介払い?
アメリカはタリバン復権を後押しし、アフガニスタンの民意もそれを支えた 民主化が失敗した理由は何か。これからどうなるのか【アフガン報告】6回続きの(3) ▽「恐怖の組織」ではない? アフガンの首都カブールと他の地域では、街に広がる空気が微妙に異なる。カブールではスカーフ姿の若い女性たちが顔を隠さずおしゃれをして歩く姿を見かける。レストランやカフェでは、家族連れの女性客の姿もちらほら目に入る。外国人との接触が多い首都で、民主化と男女同権が進んだ名残だろう。 タリバンの本拠地、南部カンダハルでは話が別だ。市場の食料品売り場は女性客であふれているが、みな全身を覆うブルカ姿。表情は見えない。買い物の様子を撮影しようとスマートフォンを構えると、タリバン情報機関員の男が現れ追い出された。監視は徹底している。 それでも、カンダハル市民のタリバン観はおおむね好意的だ。「タリバンの考え方は土着の文化を反映している。ブルカ姿も強制ではない」という声をよく聞く。
欧米や日本から見ると「自由を抑圧する恐怖の組織」に見えるタリバンは、彼らの母体民族パシュトゥン人が多い保守的な南部や東部を中心に、アフガン人に支持されている。女性よりも男性が支持する傾向が強い。 タリバン暫定政権は、公共の場では目以外を布で隠すよう女性に命じ、女性だけでの長距離移動も禁じた。こうした政策には地域の慣習と重なる部分がある。 ▽性欲と道徳的退廃から女性を守る タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダは強硬派の中核で、巡礼・寄進相サケブや最高裁長官アブドルハキム・ハッカニら古参メンバーが顧問役として脇を固めている。彼らが理想とするのは、イスラム教の原理主義的な解釈と、パシュトゥン人に根付く保守的な慣習に基づいた社会だ。個人主義と民主主義、完全な男女同権を重視するアメリカやヨーロッパの価値観とは大きな隔たりがある。現代の日本人にとっては欧米の価値観の方が身近だろう。