「女性は守るべき存在」タリバンの女性抑圧政策を支える民意とは 民主化が失敗した理由は何か。これからどうなるのか【アフガン報告】6回続きの(4)
タリバンに近い20歳代の男性記者は、その価値観を「男性は女性を扶養し、女性の名誉と尊厳を守る義務がある。女性は働く必要がない代わりに、子育てと家族の世話を課されている」と説明する。さらに「見知らぬ男性の性欲から女性を守るために衣服や行動を制限し、西洋文化と男女混合の場を禁じることで、道徳的退廃と家族の破壊を防ごうとしている」と指摘する。女性の外出や就労、就学に否定的な強硬派の主張を支える考え方だ。 濃淡の違いはあったとしても「女性は守り、隠すべき存在」という発想は幅広い層のアフガン人に浸透している。教育を受けた人たちも例外ではない。 2023年10月、1400人以上が死亡した西部ヘラートの地震被災地を取材したときのことだ。国連機関で働くアフガン人男性(24)に話を聞いた後、家族の女性の写真も撮影させてもらえないかと頼んだ。すると男性は「勘弁してくれ。アフガンの慣習は分かるだろ」と露骨に不快感を示した。
男性は英語を話し、外国人との付き合いに慣れた知識層だ。女性らは布で顔を覆い目の部分だけしか見えていなかった。それでも家族以外の男性と接触し、ましてや写真を撮られることはタブーなのだとあらためて思い知らされた。 ▽眉毛ケアはイスラムの教えに反する タリバンが女性に課した就労制限は幅広い。2022年12月、非政府組織(NGO)で勤務する女性職員の出勤停止を命令。2023年4月には国連機関に女性職員の出勤停止を命じた。さらに6月には、全国の美容院に閉鎖を指示し多くの失業者を生んだ。命令の理由は、髪と全身を覆う衣服の着用義務違反や、派手なメーク。「眉毛を整えることはイスラム教では許されていない」という理由まであった。カブールで美容院を経営していたファウジア・サダト(34)は「理解に苦しむ。タリバンはいつも女性の意見を聞かず一方的だ」と批判する。 アフガンでは2001年の旧タリバン政権追放後、民主政府の下でカブールなど都市部を中心に男女平等の啓発が進んだ。女性は国会議員として政治参加もできた。だがタリバン復権後、女性は政治参加を認められておらず、公園や公衆浴場、ジムの利用も禁止されており、次々と社会から居場所を奪われた。自由と男女平等を知った女性らの反発は強く、カブールに住む元教師の女性(29)は「タリバンは女性が子どもを産む生き物と思っている」と憤る。 ▽宗教的アプローチに期待