関節が柔らか過ぎる難病「エーラス・ダンロス症候群」、本当にレア? 誤診も多発
症状が多様で13もの型、患者はもっと多いとの指摘も
米ボルティモアの医師アリッサ・ジングマン氏(41歳)の場合、膝蓋骨(しつがいこつ、いわゆる「膝のお皿」)の脱臼と慢性的な痛みは幼少期に始まり、19歳までにはすでに2度の整形外科手術を受けていた。さまざまな困った症状の原因について明確な診断がつかないなか、ジングマン氏は自身の経験の方を疑い、心配のし過ぎがよくないのではないかと悩みながら、痛みを押して医学部に通った。「長年の間、私は自分が常に痛みに苦しんでいるという事実を、恥ずかしいことのように感じていました」と氏は言う。 ギャラリー:骨の難病と闘った女性、願い叶い博物館の展示になる 写真4点 しかし、ジングマン氏は長年苦しんだ末、2007年になってようやく「エーラス・ダンロス症候群」との診断を受けた。体の結合組織(組織同士を結びつける役割を果たす組織)に必要なコラーゲンをつくる能力に影響を与える遺伝性疾患だ。 こうした経験をしているのはジングマン氏だけではない。エーラス・ダンロス症候群は、異常に曲がる関節から奇妙な傷跡、慢性的な疲労に至るまで、さまざまな健康問題を抱える人々の間で大きな注目を集めつつある。多岐にわたる症状の背景と、なぜ診断と治療が難しいのかを解説する。
エーラス・ダンロス症候群とは
エーラス・ダンロス症候群は20世紀初頭、デンマークの医師エドバート・エーラスとフランスの医師アンリ・アレクサンドル・ダンロスによって初めて報告された。さまざまな症状と重症度があり、現在では13種類の型に分けられる。単に「エーラス・ダンロス」あるいは「EDS」と呼ばれることも多い。 エーラス・ダンロス症候群は、皮膚から骨格、内臓に至るまであらゆる部位に関わっており、その症状は不快に思う程度から生命を脅かすものまでさまざまだ。ほとんどの型は、柔軟過ぎる関節と、伸びやすく滑らかでもろい皮膚を特徴とする。最も一般的な型である「関節過可動型EDS(hEDS)」は、関節の不安定性、脱臼、関節痛、疲労を伴う。 そのほか、たとえば型の一つである「脆弱角膜症候群(BCS)」では、患者の角膜が薄く、もろくなり、また「歯周型EDS(pEDS)」では患者の歯を支える組織が破壊される。