「真のロリータには精神が宿っている」青木美沙子 × 嶽本野ばらのロリータ談義
青木:(笑)。
「下妻物語」公開から20年、今のトレンドは“懐古ロリータ”?
──そもそも、お2人はロリータファッションの何に心を惹かれて、今なおロリータの世界に居続けているのでしょうか? 青木:私は読者モデルのお仕事で初めてロリータを着た瞬間から、虜です。「お姫様になりたい」という願望を大人になっても叶えてくれるのがロリータファッションの魅力だし、ただただ「好きだから」でしかないですね。 嶽本:僕は子どもの頃からずっと可愛いものが好きだったけど、ロリータファッションにのめり込んだきっかけは「ジェーンマープル(Jane Marple)」かな。厳密にはロリータブランドではないんだけど、僕が人生で初めて買ったロリータ系のブランドで、ロリータに情熱を傾けるようになったきっかけ。好きすぎて、勝手に「ジェーンマープル同好会」みたいな非公式ファンクラブに入会して、ファンのみんなとやり取りしていた(笑)。 ジェーンマープルは、ミルクでデザイナーの経験を積んだ村野(めぐみ)さんと、同じくミルクでMDを務めた成田(保裕)さんが独立して立ち上げたブランドなんですけど、ロマンティックな可愛さを英国トラッドのスタイルに落とし込んだ、という功績があるんです。そして僕をはじめ、そのスタイルにハマった人の大多数が、その後、ロリータに発展していった。だから、僕のロリータの原点は間違いなくジェーンマープルですね。 ──街中でロリータを見かける機会が減ったようにも感じていますが、いかがでしょうか。 青木:私たちロリータの中では、減ったという感覚はそんなにないかもしれません。「下妻物語」が公開された2004年当時は沢山いたから、それに比べると減ったように感じるのかな。 嶽本:今が減ったというよりは、あの頃がいすぎた(笑)。基本的には、ロリータは着る人が限られるファッションスタイルだし、大きく人口が増えたり減ったりせずにここまで来ていると思う。ただ「下妻物語」の公開直後は、映画の影響で“下妻ロリ”と呼ばれる人たちが急増したよね。今で言う「バズり」みたいな感覚かな。当時は「ゴシック&ロリータバイブル(ロリータファッションの専門誌、2017年休刊)」があったり、ラフォーレがロリータの聖地と言われていた時代だから、それと比べると、どうしても衰退しているように見えちゃうよね。 ──ちなみに、ロリータファッションにトレンドはあるんですか? 嶽本:基本、変わらないよね。 青木:形はずっと変わらないですね。ただ、ロリータといえばひざ丈スカートだったのが、この5~6年はロリータの年齢層が上がってきて、スカート丈が長めの“大人でも着られるロリータ”がトレンドになっていますね。それと、下妻物語で深田恭子さんが着ていたスタイルが「懐古ロリータ」と呼ばれて人気です。それこそ、深田さん演じる桃子が着ている「ベイビー(ベイビーザスターズシャインブライト)」はリバイバルアイテムをたくさん出していますし。私は当時着ていたから懐かしいと感じるけど、今の若い子たちにとっては新鮮みたいです。 ──懐古ロリータが人気とのことですが、今2人が注目されているロリータファッションのニューアイコンはいますか? 青木:それが、なぜかなかなか育たなくて...。いないんですよ。私は継承したいんですけど。 嶽本:本当にいないよね。そのうち美沙子ちゃんの次世代が出てくると思っていたのに。 青木:芸能活動を始めた当初は読者モデルという立場だったし、ロリータは完全に趣味だったから、まさかその20年後に自分が業界を引っ張っていくことになるなんて思っていなかったです。 嶽本:僕も美沙子ちゃんはすぐ引退しちゃうと思っていた(笑)。次が全然出てこないから、1人で牽引していかなければいけない状態に陥っているよね。 青木:はい(笑)。でも、だからと言って自分を苦しめることなく、楽しんでやっていこうとは思っています。今はケラやゴスロリバイブルのような専門誌がなくなってしまったので、その代わりという意味も込めて、発信を続けていますね。 嶽本:美沙子ちゃんは、一般的には高価なロリータをしまむらさんとコラボすることで手に取りやすくしたり、海外布教に出かけたり、1人で本当によくやってくれていると思う。僕もロリータは着るけど、男性だからみんなの参考にはならないし。美沙子ちゃんがいなかったら、今頃ロリータファッションはどうなっていたんだろう...。