「真のロリータには精神が宿っている」青木美沙子 × 嶽本野ばらのロリータ談義
青木:ロリータファッションは、外から見ると未知な業界じゃないですか。誰かが見せ方を工夫して発信しないと、どんどん衰退していっちゃうと思うんです。だから色々なブランドさんとコラボしてみたり、挑戦は続けています。いまだに試行錯誤の毎日ですね。
ロリータに境界線はない
──近年は、“地雷系“のような、ロリータと類似したファッションも出てきました。それらのファッションとロリータファッションに、明確な違いはあると思いますか? 嶽本:今では、形式的にはロリータに近いスタイルがたくさんあるし、地雷系と一緒にされることもよくあるよね。それでも明確に違うのが、ロリータは派手な格好をしているくせに「目立ちたくない」と思って歩いているところ。「私を見て!」じゃなくて、どちらかと言うと「見ないでほしいな」と思って着ている子が多い。ロリータって2~3人で歩いているとすごく目立って6人くらいいるように見えるでしょ。だから勘違いされがちだけど、本来はみんな風景に馴染もうと思って歩いている(笑)。 あとはやっぱり、マインドかな。真のロリータファッションには「品性を保ちたい」という精神が宿っているところが、姿形だけロリータに扮したスタイルとの違いだと思う。 青木:私がロリータに目覚めた当時は、ロリータファッションってすごく敷居の高いものだったんですよ。例えば「全身同じブランドで固めなければいけない」という暗黙のルールがあったり、初めてロリータモデルをした時には、スタッフの方に「(世界観を崩しちゃうから)この格好でハンバーガーを食べたりしないでね」と言われたこともありました。 嶽本:僕は世界観や精神を重んじるあまり、昔はロリータを二次元のコスプレとして消費する人たちのことをあまりよく思っていなかったんです。「ロリータの精神がないのに着るな!」と思っていたし、「1日だけロリータになれる」みたいなコスプレサービスを見て「馬鹿にしやがって」という気持ちになったりしていた(笑)。でも、精神を持って着ているのはこちらの勝手であって、わざわざ他人の服装を制限する必要はないと気づいて、最近では「誰が着てもいいよね」と思うようになった。 例えば、僕は今日「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の鞄を使っているけど、それに対して本物のアルピニストが「お前、山も登ったことないのに、なんでノース・フェイスの鞄を持っているわけ?」と喧嘩を売ったりしてこないでしょ。本来の機能を無視してファッションとしてアウトドア向けのアイテムを纏う僕たちに対して、彼らは寛容なんです。でもそれは、ロリータも同じだと気づいて、僕もアルピニストの境地に立とうと決めたんです(笑)。 ──好きなら、どんな着方をしても良い? 嶽本:もちろん。僕たちがロリータを作ったわけではないし、単なるファンが気づいたら専門家みたいになっていただけだから、そもそも僕たちが決めることでもないんだよね。 青木:野ばらさんの言う通りで、ロリータに境界線なんてないと思います。何がロリータで何がロリータじゃないかなんてどうでもよくて、1日だけの体験でも良いからぜひ着てみてほしいし、いろんなブランドをミックスして着たって良いと思う。好きだと思うなら、とにかくロリータを楽しんで着てもらえたら嬉しいです。