「DX化の良い例だ」「セブンやヨーカドーも見習うべき? …。スシローが急拡大する「デジタル回転レーン」は一体何が凄いのか?
実際、顧客の立場に立って考えてみよう。デジローのタッチパネルは大きいから、大人数でも見やすい。特にファミリー層で来店しても、みんなが見ることができる。従来の小さいパネルではそうはいかなかった。 また、これはタッチパネル注文全体としていえることだが、実際にすしが流れているわけではないので、衛生的な心配もない。特にスシローは2023年に客の少年が醤油差しをぺろぺろ舐める、いわゆる「スシローペロペロ事件」が起こり、消費者のスシローに対するイメージに悪影響を与えた。だから、顧客の立場にしてみれば、このような衛生面での配慮は安心感をもたらすのだ。
さらに、最大の利点だと私が考えているのはデジローがもたらしてくれる「ワクワク感」だ。先ほども少し触れたが、「何が流れてくるのかわからない」という楽しさがデジローにはある。 この体験価値は、特にファミリー層や若年層には楽しく感じられると思う。みんなで回転ずしを囲む楽しさを盛り上げてくれるのだ。実際、説明会資料によれば、デジロー導入でプラスの効果が大きいのはこうした客層で、デジローの持つ「ワクワク感」がかなりプラスに働いていることがわかるのだ。
このように見ていくと、デジローは顧客側と店側のメリットの両方を満たすことができるのである。 ■あるべきDXの姿とはなにか さて、デジローの導入は、店側と顧客側の双方にメリットがあることを見てきたが、こうして考えると、デジローは近年進むDX化のなかでも、特に成功している例の一つだといえる。 デジタル技術の進展と共に各所でDX化の呼び声が聞こえているが、実際のところ、それを成功させるのは極めて難しい。筆者は都市ジャーナリストとしてさまざまな商業施設をめぐっているが、それが成功しているのはなかなか見ない。
例えば、総合スーパーマーケットのイトーヨーカドー。近年DX化にともなうセルフレジを積極的に導入しているが、私がある店舗を視察したときには、セルフレジは空いていて、有人レジが長蛇の列になっていた。利用者は高齢者が多く、セルフレジを使い慣れていない人が多いからだ。まさにうまく進まなかったDX化の例である。 あるいは、セブン‐イレブン。最近は「上げ底弁当」報道などで注目を浴びることが多いが、これに関する記事を書いたとき、「レジも使いにくい」というコメントが何件もあった。セブンのレジは半有人レジで、その操作に戸惑う人が少なくないのだ。