倒産後の事業存続率、過去10年間で33.6% ~「老人福祉」「旅館」は7割前後が存続、地域・雇用支える
都道府県別に見ると、過去10年間の累計件数では「東京都」(331件)、「大阪府」(137件)が多いが、いずれも事業存続率は低い。 事業存続率で見ると、最も高いのは「福井県」55.6%(27件中15件)。以下、「滋賀県」51.3%(39件中20件)、「福島県」51.0%(51件中26件)が続く。
【態様別】「民事再生」の事業存続率は近年90%台に上昇 ~「破産」も10%強は事業存続
態様別に分析すると、過去10年間の累計で最も多かったのは「特別清算」の621件となった。事業譲渡を前提とした第二会社方式による再生・再編スキームの一環として、積極的に活用されているものとみられる。次いで多いのは、文字通り事業存続を前提とした「民事再生法」の538件。会社が消滅する「破産」でも、何らかの形で事業が存続したケースが366件確認された。
事業存続率では、「会社更生法」が96.0%(25件中24件)と高く、過去10年間で事業が存続できなかったのは1件にとどまる。「民事再生法」も83.2%と高水準で、過去10年間の事業存続率は概ね上昇基調であり、2022、2023年度はいずれも90%台を上回っている。近年、金融機関主導あるいは再生ファンドが積極的に関わるプレパッケージ型・民事再生の積極的な活用が背景にあると考えられる。
【従業員規模別】 従業員300人以上では77.4%が事業存続 ~存続率は雇用の規模に比例
従業員規模別に分析すると、過去10年間の累計で最も多かったのは「10-50人未満」の628件。次いで「10人未満」の552件となったが、いずれも事業存続率は全体(33.6%)を下回った。 事業存続率で見ると、従業員規模が大きいほど高くなる傾向にあり、「300人以上」では77.4%と高い割合で事業が存続している。事業とともに雇用も相応に引き継がれている可能性もある。一方で、小規模事業者の事業存続・再生は課題と言えよう。
まとめ
初めて実施した今回の調査で、負債5億円以上で倒産(法的整理)した企業のうち3社に1社が、事業譲渡などの手法で“事業”が存続していることが分かった。同時に、“雇用”の一部も守られた可能性があり、一概に「倒産」といっても、スキームによっては地域経済への影響を極力抑える手法が採られているケースもあることが判明している。 また、近年は私的整理の制度も拡充されてきており、業況が悪化している企業の“事業”や“雇用”を切り出す、事業存続型の会社清算・再生の動きが活発化している。地域の雇用の受け皿や、代替のきかない産業の消失を回避するなど、地域経済にもたらす効果は大きい。リーマン・ショック以降、政策的に抑制されてきた倒産がここに来て急増しているが、その一方で、こうした手法が活用されることで企業の新陳代謝を促し、国内経済の再生・成長が進むことも期待される。