倒産後の事業存続率、過去10年間で33.6% ~「老人福祉」「旅館」は7割前後が存続、地域・雇用支える
【業種別】「サービス業」の事業存続率が44.4%と突出 ~「旅館」の事業存続型倒産が最多
業種別に分析すると、過去10年間の累計で最多となったのは「サービス業」の462件。次いで「製造業」348件、「卸売業」256件と続く。一方で、少ない業種は「運輸・通信業」70件、「不動産業」72件、「建設業」86件など。 事業存続率でみても「サービス業」が44.4%(1041件中462件)と高く、「小売業」38.2%(511件中195件)や「製造業」37.3%(934件中348件)が続く。ただ、「卸売業」は件数こそ多いものの、事業存続率は28.8%(888件中256件)と全体(33.6%)を下回っている。最も事業存続率が低いのは「建設業」の17.3%(496件中86件)で、「サービス業」と比べると27.1ptもの差がある。“事業”そのもので差別化が図りづらく、特段の設備等を持たない「建設業」や「不動産業」、「卸売業」は、事業が存続されにくい傾向が見られる。
業種細分類で見ると、過去10年間の累計で件数が最も多かったのは「旅館」の150件。2番目の「ゴルフ場」67件や、続く「貸事務所業」37件と比べても突出している。また、「旅館」は負債5億円以上の全倒産で見ても最多(229件)であり、過大な債務を抱えやすい業種である半面、宿泊施設やブランドには一定の価値が認められ、事業存続しやすいものと考えられる。 事業存続率で見ると、「ゴルフ場」が最も高く、76.1%(88件中67件)。次いで、「老人福祉事業」71.8%、「養鶏業」71.4%、「一般病院」67.7%が続く。上位の業種は、いずれも代替のきかない(資産価値の高い)施設・設備やブランドを有しており、法的整理によって金融債務等の負担が軽減されれば相応の事業価値が認められ、事業が存続しやすい。
【地域別】 事業存続率「北陸」が唯一の4割超え ~「福井県」の存続率が55.6%で最高
地域別に分析すると、過去10年間の累計件数では「関東」575件、「近畿」261件、「中部」227件と大都市圏が多くなっている。他方、事業存続率で見るとこれらの地域は下位に位置する。地方圏の方が事業存続率が高く、特に「北陸」の42.8%(180件中77件)が目立つ。地方圏では、負債が5億円を超える倒産企業は、地域経済の牽引や雇用創出において重要な役割を担っていることも多いため、事業存続への意識が高くなる傾向があると見られる。