倒産後の事業存続率、過去10年間で33.6% ~「老人福祉」「旅館」は7割前後が存続、地域・雇用支える
「事業存続型倒産」の実態調査(負債5億円以上)
2023年度の倒産件数(法的整理)は8881件発生し、前年度比30.6%の大幅増となった。リーマン・ショック以降の金融円滑化法やコロナ融資など、政府による資金繰り支援策によって抑制されてきた企業倒産がここに来て増加に転じ、事業再生が困難な企業の整理が進む。一方で、2024年3月には政府が「再生支援の総合的対策」を発表し、今後のコロナ資金繰り支援について、経営改善・再生支援に重点を置く方針を打ち出した。法的整理のスキームを用いて債務をカットし、自主再建や事業譲渡によって“事業”や“雇用”を存続、再生させる動きも活発化してきている。 帝国データバンクでは、2014年度から2023年度の10年間で発生した負債5億円以上の倒産(法的整理)を分析。下記に該当する企業倒産事例を「事業存続型倒産」と定義(※)、集計した。 なお、同様の調査は今回が初めて。 ※「事業存続型倒産」:倒産企業(法的整理)のうち、倒産前後や手続き内での事業譲渡や自主再建等によって、法的整理後も当該企業の「事業」が存続したもの。 「会社更生法」「民事再生法」…自主再建型(会社も事業も存続)や事業譲渡型(事業のみが存続)等が確認できたもの。更生・再生計画が遂行できず事業が存続できなかったケースは該当しない 「破産」…会社の清算を前提とした法的申請前の事業譲渡等が確認できたもの 「特別清算」…会社の清算を前提とした事業譲渡、第二会社方式等が確認できたもの
「事業存続型倒産」は過去10年間で1549件 ~事業存続率は33.6%
倒産前後や手続き内での事業譲渡や自主再建等によって、法的整理後も当該企業の「事業」が存続した「事業存続型倒産」(負債5億円以上が対象)は、2014年度以降の10年間で1549件が確認できた。最も多かったのは2014年度の199件、次いで2020年度の177件となった。2023年度は157件となり、2年連続で増加した。 この10年間で発生した負債5億円以上の全倒産(法的整理)4611件に占める「事業存続型倒産」の割合(事業存続率)は33.6%となり、倒産企業の3社に1社は事業が存続したことが分かった。事業存続率が最も高かったのは2020年度の41.8%(423件中177件)。コロナ禍での短期的ダメージを理由に倒産したものの、中長期的には事業価値が評価された例が多かった。