サッカーファンは「内輪になりがち」 新競技で課題発見…人気上昇への“鍵”「引き上げられる」【インタビュー】
従来とは一線を画す革新的なサッカー「キングス・リーグ」
Jリーグで選手が活躍できるようサポートに尽力する数多くのクラブスタッフ。その1人として、酒井龍氏も3季にわたりJ1の2クラブで英語通訳を務めた経験がある。ただ、その語学力は今年、“新機軸”の7人制サッカーの世界で生かされることに。既存の競技から離れたことで感じた日本サッカー界の課題や可能性があった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全3回の3回目) 【写真】「一流の振る舞い」 日本のサッカーサポーターが見せたゴミ拾いの“美マナー” ◇ ◇ ◇ Jリーグクラブの英語通訳として2021年にサガン鳥栖、22年から23年にアビスパ福岡で活動した酒井龍氏。大学サッカーの名門・筑波大学に進学しプロを目指すも、同大の大学院1年次に受けたJクラブのトライアウトに不合格だったことで夢を諦めた。 「サッカーが嫌いになりました」。人生のすべてと言えるほど情熱を注いできた競技での挫折。しかし、その後はJクラブのサッカー通訳だった人物との出会いを機に、「日本一のサッカー通訳になる」という新たな夢が生まれ、スタッフとしてプロの世界を目指すことに。「英語力がほぼゼロ」の状態もオーストラリア留学で語学力を磨き、留学中からサッカー関係者とのコネクションを築き上げた末に目標としていた場所へ漕ぎつけた。 福岡ではルヴァンカップの優勝を経験するなど3年にわたってプロの現場で貴重な経験を積んだが、今年は「キングス・リーグ」の道へ。人気ゲーム配信者・加藤純一氏がオーナーの日本代表チーム「Murash FC」で責任者を務め、5月26日から6月8日にかけてメキシコで開催された第1回の国際大会「キングス・ワールドカップ」に参戦した。 キングス・リーグとは、元スペイン代表DFジェラール・ピケ氏がチェアマンを務める7人制サッカーの大会で、2021年に発足。20分ハーフの試合には交代無制限、警告で2分間の退場などに加え、「シークレットカード」と呼ばれるエンタメ性アップの独自ルールも存在する。試合前に各チームのコーチがランダムに選び、内容によって即PK獲得や1分間の得点が2倍といった効果を発揮することが可能。まさに従来の11人制とは一線を画す、革新的なサッカーだ。 このキングス・リーグの国際大会にチーム結成から現地帯同まで関わった酒井氏。日本代表として世界で戦うなか、まず感じたのは観戦者の違いだった。 「既存のサッカーファンはキングス・ワールドカップをあまり観ていなかったのではないでしょうか。逆に誰が観ていたかと言うと、今まで日本代表にすら関心がなかった層の人たちです」 キングス・ワールドカップ開催期間中、オンライン上での平均視聴者数が64万4000人、最大同時視聴者数は120万人を記録したとされている。もちろん、一部サッカーファンも関心を持っていたはずだが、「ライトにも及ばない『無関心層』と呼ばれる人たちだが一定数いると感じました」と酒井氏。サッカー人気の成長余地について、考えをこう続ける。 「日本でサッカーは国民的スポーツであらゆる人に関心のあるものだと認識していましたが、キングス・リーグ(ワールドカップ)に携わったことは従来のサッカーについてまだまだ知らない人や興味のない人たちもたくさんいるんだという現実に直面するきっかけになりました。一方、この新競技を通じて『サッカーって意外と面白そうじゃん』『Jリーグや日本代表を観てみようかな』と思った人たちも一定数いたと聞いています。今後の日本サッカー界に可能性が残っていると思えました」