サッカーファンは「内輪になりがち」 新競技で課題発見…人気上昇への“鍵”「引き上げられる」【インタビュー】
コアなファンがライト層へ「オープンになろうよ」
ただ、受けたのはポジティブな印象ばかりではない。「サッカーに長く関わってきた人間」だからこそ新鮮かつ客観的な目で受け止めた課題がある。 「(既存のサッカーは)どうしても“内輪になりがち”な競技になっているのかなということ。戦術などに詳しいコアなファンがどんどん出来上がってきた一方で、ちょっとサッカーを観てみようかという新規のファン、ライト層に対して厳しい雰囲気があるかもしれません」 キングス・リーグのような新機軸の競技が門戸となり新規ファンが増えたとしても、サッカー界で醸成された空気が一朝一夕で変わるわけではない。コアな層も「(日本で)サッカーが成熟してきた事実の裏返し」と酒井氏は理解を示す。そのうえで、重要と指摘するのはこれまで競技人気を支えてきたファンの“開かれた姿勢”だ。 「新規のファンをより詳しい層へと引き上げられる存在は、長年サッカーをフォローしてきたコア層で間違いありません。なので、オープンになろうよという思いがあります」 酒井氏は「Murash FC」で代表責任者を務めたあと、現在はプロバスケットボール「EASL(東アジアスーパーリーグ)」の日本マーケティングマネージャーとして活動している。長く関わった競技の世界から離れたことで、改めて実感していることがある。 「サッカーの熱はサッカーでしか生めませんし、Jリーグの熱はそこにしかありません」 と同時に、有料放送への移行による露出減少などで人気低迷がささやかれる日本サッカー界についても、今後の発展を信じて止まない。 「現在はSNSを中心に見て分かりやすいものが支持を集め、“タイパ”(タイムパフォーマンス=かけた時間に対する効果)といった言葉に代表されるように効率の良さも重要視されています。 かたや、サッカーは一見難しいかもしれませんが、どしんと構えられる、世の中の傾向に簡単に揺らがない奥深さや魅力がある競技だと思っています。日本でサッカーはどんどん成熟してきていますし、観れば観るほど面白く、味わい深い。なので長期的なスパンで、面白いなと感じる人たちは増えていくでしょうし、一度離れてしまったとしても必ずサッカーに戻ってきてくれるファンはいると信じています」 キングス・リーグに加え育成年代に向けた4人制の全国大会も開幕するなど、新たな形態を見せているサッカー。既存の競技との相乗効果による進化が期待される。 [プロフィール] 酒井龍(さかい・りゅう)/1994年8月16日生まれ、茨城県土浦市出身。筑波大学で蹴球部に所属し、同大大学院へ進学後にサッカー通訳になることを志す。大学院在学中にはオーストラリアのビクトリア大学へ留学。現地ではAリーグのメルボルン・ビクトリーとの共同研究を行ったほか、ビクトリア州2部クラブで選手としても活動した。卒業後の2021年J1サガン鳥栖、22年から23年にJ1アビスパ福岡英語通訳として活動し、福岡では23年のルヴァンカップ優勝を経験している。福岡退団後は7人制サッカー、キングス・リーグ日本代表「Murash FC」代表責任者を務め、現在はプロバスケットボール「EASL(東アジアスーパーリーグ)」の日本マーケティングマネージャー。また、YouTuberとしても活動し、「りゅうの留学英語チャンネル」登録者数は13万人超に上る。
FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi