新型コロナ禍と東日本大震災を知る浦和レッズ武藤が語る「今世の中で絶対に必要ではない職業のサッカーをする意義」
サンフレッチェ広島との開幕戦を引き分けていたベガルタは中断期間をはさみ、12試合連続無敗(6勝6分け)をマーク。残留争いを強いられた前年から一転して4位に食い込み、翌シーズンには2位とクラブ史上の最高位を立て続けに更新した。 スローガンとなった『希望の星になる』は、フロンターレ戦前日に手倉森誠監督(現V・ファーレン長崎監督)が口にした「明日は復興への第一歩。自分たちが希望の星になれるように、戦う姿勢を90分間表現する」に由来する。被災地を勇気づけ、ともに前へと進んで行く第一歩になったからこそ、サッカー人生で最も感動した一戦として、いまも真っ先に武藤の脳裏に浮かんでくるのだろう。 感慨深い一戦を今月上旬におもむろにツイートしたのにも理由がある。感染拡大の一途をたどっている新型コロナウイルスの影響を受けて、開幕節を終えた直後の2月下旬から公式戦の中断を余儀なくされている今シーズンは、週末からサッカーが消えた点で9年前と状況が酷似している。 「大勢の方々が辛い思いをしていますけど、それでも前回は先が見えていた部分がありました。仙台をはじめとする被災地で試合ができるのか、という不安はありましたけど、それでも震災から少したって決まったリーグ戦の再開へ向けて、という思いがありました。いまは再開がいつになるかわからないという状況が、選手としてはいろいろな部分で難しいんじゃないかな、と」 9年前は4月1日の段階で、電力不足を鑑みてナイトゲームは行わない条件のもとで、同23日からのリーグ戦再開が決定。ヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)は、予選リーグおよび決勝トーナメントで争われる大会方式が、すべてトーナメント方式に変更された。 ひるがえって今シーズンは3度設定された再開目標がすべて流れ、いま現在では白紙状態に戻されている。これからも予断を許さない状況が続くなかで、J1では全18クラブが活動を休止。今月5日から活動を休止していたレッズは、7日に初めて発令された緊急事態宣言の対象地域に埼玉県が入ったことで、19日に設定されていた再始動予定が未定に改められている。