スーパーフォーミュラで優勝者が“運営”に苦言…インタビューでも野尻智紀の表情は険しいまま 『危険』ドライバーの訴えは通らず
SF 第3戦 決勝 23日 スポーツランドSUGO(宮城県) ペン=田村尚之、カメラ=多賀まりお 悪天候で大荒れの展開となり、トップが14周目に入った時点で、クラッシュによる赤旗が提示され、そのまま打ち切りになった。ポールから臨んだムゲンの野尻智紀(34)は、初勝利を挙げた思い出の地で10年ぶりの勝利を挙げたが、あえて安全面の不備などに苦言を呈した。2位に入った同僚の岩佐歩夢(22)、3位に続いたトムスの坪井翔(29)ら出場した選手たちの気持ちを、2021、22年にシリーズを連覇した元王者として代弁した。 (観衆=9300人) 赤旗打ち切りが決まった瞬間、優勝インタビューを受ける野尻の表情が険しくなっていく。「この内容での優勝は望んでいたものではない。でも、チャンピオンシップを考えると貴重な1位。複雑な思いが残った」 周回数が規定を満たさずハーフポイントになったものの、ランク単独首位に返り咲き、昨年逃したシリーズ3連覇への雪辱に一歩近づいた。ただ、10周あまりで打ち切られただけでなく、直前のウオームアップを含めると計3台の車両がクラッシュした最終コーナーの対策や、危険な状況を訴えたドライバーの声が運営側に通らなかったことに堪忍袋の緒が切れた。 最終コーナーでは、本来ウレタンパッドが置かれる場所で、ガードレールがむき出し状態。4輪の国際格式レースでは同パッドを使えないが、タイヤバリアーの手配が間に合わなかった。21日のコースウオークで危険性を感じた野尻は、サーキットなどに指摘したものの、物理的な理由で対策できずじまいだった。 悪天候になった決勝日は、ウオームアップで山本尚貴(ナカジマ)、決勝でも阪口晴南(セルモ・インギング)がガードレールに直接ぶつかって破損。2人は大きなケガをしなかったものの、修理に大きな時間を費やした。野尻は「雨が降ったら危ないと思っていたが、その予想通りに。もっと違う準備ができたのでは。起きるべくして起きた中断」と指摘した。 レース中もタイヤのグリップ(接地)力がなかなか得られず、セーフティーカー(SC)先導でスタートが切られた時点で、ほとんどのドライバーが危険性を指摘したが、受け入れられなかったという。 2度の王者を経験し、参戦11年目の野尻はシリーズの“顔”でもある。「僕はSFが大好き。好きだからこそ、もっと良くなってほしいと思って、強い言葉を発した」。愛するSFの改善に向け、あえて声を上げた。
中日スポーツ