スキー場の“倒産件数”は過去最多でも「なぜか好業績」のスノーリゾート会社の存在。稼ぐのは“冬だけ”じゃない
スキー人口減少時代にどう挑む? “次世代”顧客獲得への地道な種まき
日本国内に目を向けると、長らく続くスキー人口の減少がスキー場経営にとって深刻な課題となってきました。若年層のウィンタースポーツ離れが顕著で、かつてのスキーブームを知る世代からすれば、ゲレンデの賑わいは大きく様変わりしています。 このような状況を踏まえ、日本スキー場開発は「子ども向けプログラム」の充実に力を入れています。初心者に配慮した緩斜面の整備や、レッスンをしっかり受けられるスクールプログラムを用意することで、ファミリー層が子どもを連れて気軽に訪れやすい環境を作ろうとしているのです。 こうした地道な取り組みは、今すぐには大きな数字に結びつかないかもしれませんが、将来的にウィンタースポーツ人口を底上げする重要な施策です。全国的にスキー場の閉鎖や統廃合が相次ぐなか、勝ち残るためには“次世代の顧客”を育てることが欠かせません。日本スキーが積み上げているノウハウは、今後の国内スキー市場を下支えする一つのモデルケースになることが期待されます。
新時代のリゾート戦略は地方をどう変えるのか
冒頭にあげたとおり、2023年のスキー場の倒産件数は過去10年で最多の7件。日本スキー場開発はこの難局に対し、M&Aを積極的に推進してスキー場を買収・再生し、リニューアル投資を行うというアプローチをとってきました。例えば「白馬岩岳マウンテンリゾート」では、約21億円を投じてゴンドラリフトを刷新し、1時間あたりの輸送能力を1350人から最大2460人まで引き上げました。乗車時間も1分程度短縮されることで、利用者の快適度が格段に向上しています。こうした設備投資が利便性を高めることでさらなる集客が見込める要因となるでしょう。 かつてスキー場は「雪が降らないと成り立たない」というビジネスモデルと考えられてきました。しかし日本スキー場開発の事例は、山岳リゾートが“四季を通じて”魅力ある観光資源になり得ることを証明しています。自然環境を最大限に生かしつつ、インバウンドや新たなファミリー層を呼び込み、地域の再開発にも挑戦しているのです。 実際に、白馬エリアではラグジュアリーホテルの誘致に向けた動きや、山麓の施設整備など、グローバル水準のリゾート地へとアップデートするための大規模投資が続いています。またスキー人口が減っている日本では、ウィンタースポーツだけでゲレンデを支えていくのは難しくなりつつあります。だからこそ、“夏や秋でも集客できる”経営戦略が、今後ますます重要になってくるはずです。日本スキーが掲げる中期計画でも、「次世代の育成」や「訪日外国人需要の取り込み」を重点項目として位置づけており、長い目で見た持続的な成長を目指しています。 かつてのスキーブームは過ぎ去り、逆境だからこそ、“通年型”リゾートの可能性を最大化する機運が高まっているのです。雪不足や人口減少の課題を乗り越え、世界をも魅了する山岳リゾートへと進化していけるのか。日本スキー場開発の今後の動向は地方経済を活性化する大きなヒントになるかもしれません。 <文/鈴木林太郎> 【鈴木林太郎】 金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数 X(旧ツイッター):@usjp_economist
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